特約リポーター: 髙橋英彦(防災士/Bosai Plus 写真も)

台風10号豪雨災害を教訓に、3年間で200名の防災士を
中居町長「岩泉再生の願いとともに、台風10号の教訓を後世に伝えていくことは、現在を生きる私たちの責務」

 東日本大震災をはじめ豪雨、土砂災害などの自然災害を教訓とした防災教育の整備など、各地で震災経験を活かした防災訓練等に取り組む動きが本格化している。また、自治体や教育機関が次世代を担う防災リーダーとなる防災士を養成するなど、次の自然災害に備える取組みが進められている。

岩泉町防災士養成講座で
岩泉町防災士養成講座で

 こうした中、2016(平成28)年8月に台風10号による豪雨災害を受けた岩手県岩泉町では、ピーク時に428世帯873人が孤立、高齢者施設で9人が犠牲になるなど、ライフラインや家屋被害が甚大で全壊半壊等家屋が1905棟の被害を受けた。岩手県では河川の氾濫で沿岸部を中心に4550戸が被災し、県の被害総額は1428億7000万円で、大雨災害では過去最大となった。現在、町内のいたる所で復旧作業が続けられているが、全体の4割ほどの進捗で、2020年度まで全復旧事業を終える見通しだ。同町では豪雨災害の教訓から防災士養成や防災講演会の開催等住民の防災意識を高める取組みが行われている。

 岩手県沿岸では宮古市、大槌町、釜石市に続き防災士養成を実施した同町では、「災害に強いまちづくり」を目標に今年度から3年間で約200名の町民や町職員を対象に防災士を養成する計画だ。自治体として東日本大震災や台風10号豪雨災害による教訓からしっかりとした防災知識を持つ防災リーダーの育成が必要との判断によるものだ。

 このほど行われた岩泉町防災士研修講座で、同町の佐々木重光危機管理監は「一昨年の台風10号豪雨ではいたる所で道路が寸断され各地区が孤立した。岩泉町はいま、町民と一体となり復旧復興に力を入れている。防災・減災の施策も大変重要と考えており、その一環として防災士の養成事業を行うことになった。災害を教訓として3年間で200名の防災士を養成することにしている。地域は地域で守るという意識で防災力向上につながることを期待している」と挨拶した。受講した住民からは「おととしの台風では、川が溢れて怖い思いをした。この機会に災害への対応力を高めたい」、「地域防災力の強化のために受講した。広い視野で知識を集め、地元の情報を学びながら新しい知見も広めていきたい」、「東日本大震災、台風10号に被災したため受講した。個人の防災意識は、こんなになるとは思わなかったと語る人が後を絶たない。教えるのではなく教わりながら活動をしたい」、「役立つハザードマップの作成等リーダーシップを発揮できる防災士活動を行いたい」などの声が寄せられた。

 今回の防災士研修講座の受講者が編集した「台風10号による豪雨被害を受けて~写真記録集」(左・写真参照)が、災害記録集として町内の宿泊施設等で販売されている。住民が被災直後から撮影した画像を62ページにわたって編集したもので、住民視点による貴重な記録だ。また、岩泉町ホームページでは、「平成28年台風豪雨災害復旧の記録 ふるさと岩泉の再生へ」(86ページ)が閲覧できる。

 中居健一町長はこの中で、「岩泉の再生を願うさまざまな思いと行動の集結により、復旧復興に向けて一歩一歩進んでいるものと認識している。この歩みを着実に、そして間断なく進めていくことが、ふるさと岩泉を再生する確かな一歩につながっていくものと確信している。台風10号の教訓を後世に伝えていくことは、現在を生きる私たちの責務である。災害の記憶を風化させることなく教訓を生かさなければならない。あのとき、何が起こり、どう行動したのか。記録集が防災・減災対策の一助となれば幸いである」と記している。

 地域防災は「自助・共助が中心で、その地域の自然を正しく理解し、災害の課題を確認すること」、「顔の見える人間関係をつくり、コミュニティレベルで相互協力できる体制を確立すること」、「震災を経験したからこそ活かせる教訓を次世代に伝承すること」が大切である。地域で得た情報や知識を防災訓練で活用するなど継続的な取組みを行い、減災につなげることが防災士の役割でもある。
>>岩泉町HP

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