「冠水する前に止める、入らせない」 冠水リスクを4分類
国土交通省は10月6日、「アンダーパスにおける冠水事故防止に向けたガイドライン」を策定した。近年、大雨の頻発化・激甚化によって全国各地で発生しているアンダーパス冠水事故を教訓に、従来の「冠水したら対応する」考え方から、「冠水する前に通行を止める」「危険な場所へ車両を入れない」という予防重視の方針へ大きく転換するものだ。
国交省は道路管理者に、アンダーパスをリスクの高い順に、「特に高い冠水リスク/高い冠水リスク/一定の冠水リスク/注意喚起・監視等リスク」の4分類とするよう求める。こうした方針を「冠水する前に止める、入らせない」と表現し、道路利用者の命を守るための新たな安全対策として全国の道路管理者に取り組みを求めている。

国土交通省:アンダーパスの冠水事故防止に向けたガイドラインを策定 〜「冠水する前に止める、入らせない」対策を推進〜
■ キーワードは「多重防御」 「フェールセーフ」の発想も導入
ガイドラインの基本理念は「多重防御」である。多重防御とは「予防的な事前通行規制」、「冠水時の迅速な通行規制」、「車両進入防止対策」、「排水機能の確保」を重ね合わせて事故を防ぐ考え方だ。これまでの対策は、言わば「冠水しないこと」を前提にしたハード対策による単一防御に近かった。しかし、想定を超える豪雨が発生する時代には、「どこかの防御が失敗しても事故にならない仕組み」をつくっておくことが重要になる。
そこで注目されるのが「フェールセーフ」の考え方だ。フェールセイフとは、機械や設備に異常が発生した際、自動的により安全な状態へ移行させる労働災害防止分野で重要な考え方だが、今回のガイドラインはアンダーパス管理にこれを適用した。
例えば排水ポンプが故障しても通行規制が機能し、通行規制が間に合わなくても遮断機で進入を防ぐ、さらに運転者への警告表示を重ねることで、安全性を着実に高めるという考え方だ。千葉豪雨では、排水ポンプだけでなく非常用発電機にも不具合が生じたケースが問題視された。
こうした教訓がフェールセーフ導入の背景にあり、道路防災分野でここまで体系的に導入される意義は大きいものがある。


■ リスクに応じて4段階に分類 遮断機の設置も進む可能性
ガイドラインでは全国のアンダーパスを冠水リスクに応じて分類する考え方も示された。特に注目されるのは、人的被害や重大な物的被害の発生履歴がある場所、あるいは冠水履歴のある幹線道路などを「特に高い冠水リスク箇所」と位置づけ、こうした場所では、警戒レベル4相当の防災気象情報や一定の降雨予測が出た段階で、実際の冠水を待たずに事前通行規制を実施する。人命を守る効果は大きいだろう。
もう一つの柱が車両進入防止対策だ。特に高リスク箇所では遠隔遮断機や自動遮断機の設置を基本とする考え方が示された。遮断機の設置で、「まだ通れるだろう」と進入してしまう運転者の判断ミスを防ぐ。道路情報板、赤色灯、路面標示、水位センサー、監視カメラなども組み合わせ、進入防止と注意喚起を強化する。
■ 道路利用者にも求められる意識改革 気候変動時代の道路防災へ
ガイドラインは道路管理者だけでなく、利用者への注意喚起も重視している。豪雨時には「この程度なら通れるだろう」という過信を捨てることが重要だ。車は見た目以上に水に弱く、短時間で運転者の命の危険に直結する。
今回のガイドラインは単なる技術指針ではない。背景には、気候変動によって極端な豪雨が日常化しつつある現実がある。従来の「施設(ハード)を整備すれば安全」という発想から、「想定外が起きることを前提に被害を防ぐ」発想への転換が求められている。
アンダーパスは全国各地の生活や物流を支える重要なインフラだが、ひとたび冠水すれば重大事故につながる危険も抱える。国交省が打ち出した「冠水する前に止める、入らせない」という方針は、気候変動時代の道路防災の新しいスタンダードとなる。
防災士も地域活動でアンダーパス利用者にガイドラインの“思想”を啓発したい。

〈2026. 10. 15. by Bosai Plus〉
