バラバラな被災情報を集約し
命を支える災害対応の司令塔
「D24H」最大の特徴は、複数の情報を有機的に関係づけられること
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災害時保健医療福祉活動支援システム=D24Hとは何か
情報集約で被災状況を見える化⇒必要な場所へ必要な支援を届ける
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大規模災害が発生すると、被害状況の把握は想像以上にむずかしい。被災した医療機関は診療を継続できるのか。高齢者施設で停電が発生していないか。避難所に十分な水や食料、トイレ、ベッドが確保されているか――こうした情報は、これまではさまざまな機関が個別にそれぞれ収集するため、現場では情報が分散し、全体像を把握するまでに時間がかかることが少なくない。
こうした課題を解決するため、厚生労働省が整備しているのが「災害時保健医療福祉活動支援システム(以下、「D24H」)」である。
厚生労働省:災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H)について


「D24H」とは、「Disaster Digital Information System for Health and Well-being」の略称(Disaster Digital(Dx2)+4(for) Health(and Well-being)/“24H”は24時間とも解釈可)で、災害時の保健・医療・福祉に関する情報を一元的に集約し、地図上で見える化するシステムだ。「D24H」の最大の特徴は、複数のシステムから情報を自動的に集約できる点にある。例えば――
・医療機関の被害状況を管理する「EMIS(広域災害救急医療情報システム)」
・介護施設や障害者施設の被害状況を共有する「災害時情報共有システム」
・内閣府の「新総合防災情報システム(SOBO-WEB)」
などと連携し、医療、介護、福祉、避難所、道路、河川、気象などの情報を集約する。集められた情報は地図上に表示されるため、行政や支援機関は「どこで何が起きているのか」を一目で把握できる。
また例えば、被災した病院が診療可能か、電気や水道が使えるか、介護施設に人的支援が必要か、避難所の環境が悪化していないか、といった情報をリアルタイムに確認できる。そして、災害対応では支援物資や医療チームを無計画に送り込めばよいわけではなく、「どこに、どれだけの支援を送るべきか」の迅速な判断・意思決定が最重要なのだ。

このように「D24H」は、保健医療福祉調整本部の意思決定を支援することを目的としている。システムに集約された情報を分析することで、DMAT(災害派遣医療チーム)、保健師チーム、DWAT(災害派遣福祉チーム)、DPAT(災害派遣精神医療チーム)などの派遣先や派遣規模を判断しやすくなるのだ。また、支援物資の供給先や避難所環境の改善が必要な場所も特定しやすくなる。
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想定される超広域災害では、「情報過多」も問題になり得る
保健医療福祉分野の災害対応・情報戦の切り札 「D24H」
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「D24H」はすでに実証段階ではなく、実災害で活用されている。厚生労働省によると、2024年1月に発生した能登半島地震では、発災直後から避難所状況を把握するための機能が開放され、石川県の保健医療福祉調整本部や保健所などが活用した。
避難所で活動するDMATや保健師らは、「ラピッドアセスメントシート」と呼ばれる共通様式を使って現地情報を入力した。入力された情報はリアルタイムで共有され、避難所の衛生環境改善などに役立てられた。能登半島地震では、最大で約400カ所の避難所情報が登録され、入力・更新回数は延べ4500回を超えたという。

災害時には、建物の倒壊や負傷者の発生だけでなく、時間の経過とともに避難所生活の質も重要な課題となる。近年の災害対応では特に、「T:トイレ(Toilet)、K:キッチン(Kitchen)、B:ベッド(Bed)」が注目されている。避難所の環境が悪化すると、感染症やエコノミークラス症候群、持病の悪化などの健康被害が発生しやすくなる。
「D24H」では、避難所の状況を継続的に収集・評価し、トイレ不足や食事環境の問題、ベッド不足などを把握することで、生活環境改善の判断材料を提供している。そこでは当然、医療だけでなく福祉も対象となる。従来の災害情報システムは、医療分野に重点を置くものが多かったが、近年の災害では高齢者や障害者への支援の重要性が高まっている。
「D24H」は、病院、診療所、介護施設、高齢者施設、障害者支援施設、児童福祉施設など幅広い施設の情報を扱い、その情報も施設ごとの被害状況を把握できるため、災害弱者への支援を強化する役割も期待されている。
防災DX化(デジタル・トランスフォーメーション)の有効性を極めたような「D24H」は、多様な組織の利用もまた可能となる。厚生労働省、都道府県、市区町村、保健所、DMAT、JMAT、日本赤十字社救護班、DWAT、DPAT、JRAT、自衛隊など、多数の関係機関が情報入力や活用を行うことが想定されている。
つまり「D24H」は、一つの組織のためのシステムではなく、「災害対応に関わる全員が同じ地図と同じ情報を見るための共通基盤」なのだ。

このように「D24H」は、その膨大な情報を集約し、地図化し、関係機関が共有できる仕組みとして期待されている。病院や介護施設、避難所の状況を同じ画面で把握できることは、医療・福祉支援の効率化だけでなく、被災者の命と健康を守ることにもつながる。
災害対応は「情報戦」ともいわれる。「D24H」は、被災地の状況を正確かつ迅速に把握し、限られた人員や物資を最も必要な場所へ届けるための、いわば「保健医療福祉分野の災害対応プラットフォーム」である。今後、その重要性はさらに高まっていくことは間違いない。

〈2026. 10. 09. by Bosai Plus〉

