防災・減災が主流となる社会の実現に向けた取組方針

2050年を見据えた今後の国土づくりの方向性
――全人口の7割が災害リスクエリア 土地利用規制・誘導も

●「デジタル世界の到来」 人口減少でも安心して暮らせる地域・国土の構築を

 国土の利用、開発、保全など総合的な政策について審議する国土交通省の国土審議会「国土の長期展望専門委員会」で、「2050年を見据えた今後の国土づくり」の方向性について検討が行われ、その結果とりまとめが去る6月15日、公表された。「コロナ禍も契機としたデジタル世界の到来」は、地方にとっては再生の好機となるとし、創意工夫によりデジタルとリアルを融合し地域に実装することで、人口減少下でも安心して暮らし続けられる多彩な地域・国土の構築をめざす、としている。

 とりまとめは、国土づくりの目標を「真の豊かさを実感できる国土」とし、目標実現に向けた3つの視点として「ローカル」、「グローバル」、「ネットワーク」をあげた。「ローカル」では、テレワークの進展により職場と仕事の分離など働き方・暮らし方・生き方を自由に選択できる国土にしていくためにも、地域資源等を生かした持続可能な地域を多数創出する必要があるとした。「グローバル」では、地球環境問題に対応しつつ成長産業を育成し、人口減少下であっても「稼ぐ力」を維持・向上させていく必要性を訴え、「ネットワーク」では、情報通信・交通ネットワークの充実、地域住民自らによる国土の適正管理の推進、防災・減災・国土強靭化による安全・安心な国土の実現、2050カーボンニュートラルの実現に資する国土構造の構築、共生社会の構築をめざす、としている。

P4 1 日本全国における災害リスクエリアに居住する人口 - 国土の長期展望<br>防災・減災が“当たり前”の社会を
日本全国における災害リスクエリアに居住する人口
P4 2 日本の総人口は2050年には約1億人へ減少(国土の長期展望専門委員会最終とりまとめ資料より) - 国土の長期展望<br>防災・減災が“当たり前”の社会を
日本の総人口は2050年には約1億人へ減少(国土の長期展望専門委員会最終とりまとめ資料より)

 このうち「防災・減災・国土強靭化による安全・安心な国土の実現」については、わが国では全人口の約7割が災害リスクの高いエリアに居住しているいっぽう、気象災害の激甚化・頻発化、巨大地震発生の切迫、コロナ禍での災害などの複合リスクへの懸念などを背景に、「防災・減災を考慮することが当たり前となる社会の実現」、「防災・減災、国土強靱化の推進」、「流域全体で治水対策に取り組む流域治水の推進」(堤防整備や上流域の森林整備・治水対策、土地利用規制によるリスクの低い地域への誘導など)、「事業継続計画等の防災対策や事前復興の取組みの促進」、「複合リスクも念頭においた国土づくり」、「東日本大震災の教訓を生かした災害対策・地域づくり」が重要とする。

P4 3 防災・減災が主流となる社会の実現に向けた取組方針 - 国土の長期展望<br>防災・減災が“当たり前”の社会を
行政プロセスや経済活動、事業に様々な主体を巻き込み、防災・減災の観点を取り入れた取組を進めていくことにより、防災・減災に関する国民意識を普段から高め、事前に社会全体が災害へ備える力を向上させる

 2050年はいまから30年後となるが、この間にも、南海トラフ巨大地震や首都直下地震をはじめとする想定巨大地震のほか、大規模気象災害や富士山火山噴火などの大規模災害の発生が起こる確率はかなり高いと見るべきだ。防災・減災は引き続き、連続的にこれまでの活動をより実効性の高いものへ、高度化しなければならないだろう。

>>国土交通省:デジタルを前提とした国土の再構築~「国土の長期展望」

〈2021. 07. 03. by Bosai Plus

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