南海トラフ、愛知県の最新被害予測公表
―進む防災対策と残る課題
液状化や津波による被害も甚大。
特にゼロメートル地帯や沿岸部での浸水リスクが高い
愛知県防災会議地震部会は6月2日、南海トラフ巨大地震を想定した最新の被害予測調査結果を公表した。今回の調査は、国が2025年3月に発表した被害想定の見直しを受け、県独自に最新の地盤・地形データや社会状況を反映して12年ぶりに実施されたもので、今後の地震防災対策の基礎資料となる。
● 重要なポイント5つ
1.最新データを反映した被害予測の実施:地盤や津波計算のための地形データ、建物・人口データ、堤防整備状況など最新情報を反映し、被害予測を大幅に更新
2.被害の特徴と規模:震度6弱以上の強い揺れが広範囲に及び、液状化や津波による被害も甚大。特にゼロメートル地帯や沿岸部での浸水リスクが高い


3.防災対策の進展と効果:建物の耐震化や堤防整備、津波避難意識の向上などの対策により、浸水・津波による被害や死者数は前回調査より大幅に減少
4.ライフライン・経済被害の深刻さ:断水や停電、通信障害などライフラインの被害が甚大で、直接的経済被害額は約19.4兆円と推計
5.今後の課題と防災対策の重要性:さらなる耐震化、避難体制の強化、災害廃棄物処理や孤立地域対策など、多面的な防災対策の継続が不可欠。

● 津波からの迅速な避難体制の確立が課題
調査では、過去最大級の地震・津波モデル(マグニチュード(M)8.9〜9.0超)を想定。県内の広い範囲で震度6弱以上の強い揺れが予測され、特に平野部や半島部では一部で震度7の非常に強い揺れとなる。濃尾平野、岡崎平野、豊橋平野などでは液状化危険度が極めて高く、沿岸部やゼロメートル地帯では津波や浸水のリスクが顕著だ。

津波については、豊橋市で最短9分後に津波(30cm)が到達、田原市では最大9.6mの津波高を予測。堤防や水門の耐震対策が進んだことで、浸水面積は前回調査の約26,500haから約11,600haへと半減したが、海岸部や河川付近では30分以内に浸水。
建物被害では、揺れによる全壊棟数が約5万棟、液状化による全壊が約1.7万棟、浸水・津波による全壊が約4600棟と推計。火災による焼失は約2万棟にのぼる。
人的被害では、建物倒壊等による死者が約2400人、浸水・津波による死者が約2800人(早期避難率が低い場合)とされるが、早期避難率が高まれば浸水・津波による死者数は約500人まで減少する見込みだ。
ライフライン被害も深刻で、最大約698万人が断水、約89%が停電、通信障害も同程度発生する。避難者は最大約158万人、帰宅困難者は約91万人と推計。
直接的経済被害額は約19.4兆円、間接的経済被害(生産額の低下)は約3.4兆円に達する。一方で、建物の耐震化や津波避難意識の向上、堤防整備などの防災対策が進んだことで、浸水・津波による全壊棟数や死者数は前回調査より大幅に減少した。
今後の課題としては、さらなる建物の耐震化率向上、家具の転倒防止対策、感震ブレーカーの普及、全員が迅速に避難できる体制の確立が挙げられる。これらの対策が徹底されれば、建物倒壊による死者数は約2400人から約300人、津波による死者数も約2800人から約100人へと大幅に減少する試算も示されている。
また、災害廃棄物の処理体制強化や孤立地域対策、医療・福祉施設の機能維持、帰宅困難者対策など、多面的な防災対策の継続が不可欠だ。企業の事業継続計画(BCP)策定や交通インフラの迅速な復旧、ボランティアを含めた官民連携も重要な柱となる。
県は「地震・津波から命を守る」ため、引き続き防災教育や啓発活動、防災人材の育成に力を入れる方針。南海トラフ地震は千年に一度とも言われる巨大災害だが、日頃の備えと地域ぐるみの防災意識の向上が、被害の最小化につながると強調している。
〈2026. 06. 18. by Bosai Plus〉
