100年先、さらには1000年先の社会を見据え、
進化する防災まちづくりの最前線
国(国土交通省)と東京都は、首都「東京」において、大規模洪水や首都直下地震などによる壊滅的な被害を回避するための防災まちづくりを強力に推進することを目的に、「災害に強い首都『東京』の形成に向けた連絡会議」を設立、2020年12月に「災害に強い首都『東京』形成ビジョン」を策定した。
このほど、近年の社会情勢の変化や能登半島地震の教訓等を踏まえ、これまでの取組みを一層強化・推進するとして、複合災害対策や水害・地震対策の強化に関する取組みを追加してとりまとめた 「形成ビジョン改定案」を公表した。

首都・東京は、世界有数の大都市として政治・経済・文化の中枢機能を担ういっぽう、自然災害のリスクを常に抱えている。近年、気候変動による水害リスクの増大や首都直下地震の切迫性、さらには複合災害の発生リスクが高まっており、都市の脆弱性が改めて浮き彫りとなっている。こうした状況を受け、国と東京都は「災害に強い首都『東京』形成ビジョン」を改定し、ハード・ソフト両面からの防災まちづくりを強力に推進している。
■ 深刻化する災害リスクと複合災害への備え
東京は、海面水位より低いゼロメートル地帯を含む都市構造を持ち、荒川や江戸川などの堤防が決壊した場合、広範囲かつ長期間にわたる壊滅的な被害が想定されている。さらに、今後30年以内に70%の確率で発生するとされる首都直下地震や、気候変動による豪雨・洪水の頻発化、地震と水害が連続する複合災害のリスクも現実味を帯びる。
2024年能登半島地震では、地震後の大雨で二次災害が発生し、複合災害の脅威が再認識された。


■ 都市構造の脆弱性とライフラインの危機
東京の東部地域では地盤沈下によるゼロメートル地帯が広がり、堤防決壊時には人口集中地域が短時間で浸水、2週間以上の長期浸水やライフラインの停止が想定される。地下鉄や地下街、企業本社が集中する都心部も浸水リスクを抱える。また、木造住宅密集地域は老朽化や耐震性不足が進み、地震時の倒壊や火災による甚大な被害が懸念される。
■ 進展する防災対策と残る課題
これまで堤防や調節池の整備、木造住宅密集地域の不燃化・耐震化、緊急輸送道路の無電柱化など、ハード面の対策が進められてきた。しかし、治水施設の整備は依然として途上であり、気候変動による降雨量増加や施設能力を超える洪水への備え、住民の水害リスク認識の向上など、課題は山積している。
■ 面的な「防災まちづくり」と高台まちづくりの推進
今後の防災まちづくりでは、点や線の対策に加え、面的なアプローチが不可欠とされる。特にゼロメートル地帯などでは高規格堤防や高台化した公園・公共施設の整備、避難スペースを確保した建築物の推進など、「高台まちづくり」が重要視されている。
広域避難や垂直避難の実効性向上、避難路ネットワークの整備も進められており、モデル地区での実践が各地で始まっている。また、木造住宅密集地域では、防災都市づくり推進計画に基づき、老朽木造建築物の除却や建替え支援、防災生活道路の拡幅、不燃化特区制度の活用など、地域の特性に応じた対策が進行中だ。

■ デジタル技術と多主体連携によるレジリエンス強化
災害対応力の向上には、デジタル技術の活用が不可欠。AIやDXを活用した被災状況の早期把握、衛星画像やセンサーによるリアルタイム監視、行政職員の復興訓練やマニュアル整備など、迅速な復旧・復興体制の構築が急がれる。さらに、国・東京都・区市町村・民間事業者・地域住民が一体となり、役割分担と連携を深めることが鍵となる。
■ 未来へ向けて――100年先を見据えた都市の更新
東京の防災まちづくりは、100年先、さらには1000年先の社会を見据え、未来の子どもたちに安全・安心な首都を引き継ぐ道である。首都「東京」がいかなる災害にも人命を守り、社会経済活動を持続し、速やかに復旧・復興できる都市であり続けることが、日本全体の安全と発展に直結する課題だ。
〈2026. 06. 15. by Bosai Plus〉
