“冬の地震/津波”を想定内に
厳冬期災害シナリオに死角?
東北・北海道は1年のほぼ半分は最低気温ひとけた。克雪と耐寒と…
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千島海溝・日本海溝巨大地震――発生確率は高まるばかり
大規模災害想定に“寒冷という上乗せリスク”
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「克雪」は防災上、重要なテーマだ。本紙もこれまで何度か「克雪」を巻頭企画で取り上げている。今冬もまた、日本海側を中心に積雪の多さがニュースとなっている。
地震・津波対策上は、この積雪が豪雪地帯はもとより、厳冬のさなかの避難路の確保が重要な防災・災害対策となることは言うまでもない。しかし、柏崎原発(新潟県)で重大事故が発生した場合の避難支援で、厳冬期・豪雪下での避難対策が(も)手薄だとされている。2023年11月に日本医師会が北海道で災害支援訓練を行ったが、「情報共有システム活用」が主眼ということで、厳冬期の災害想定がされていなかったことに、本紙は疑問を指摘した。
ひるがえって、国の地震本部・地震調査委員会は1月15日、過去に長期評価を行った海溝沿いや内陸の活断層で起きる地震について、今年1月1日を基準として発生確率を再計算した結果を公表。千島海溝沿いの根室沖で想定されるマグニチュード(M)7.8〜8.5程度の巨大地震の30年以内の発生確率が80%程度(84%)から90%程度(85%)に上がっている。
あくまで確率ではあるが、この数値はほぼ確実に起こるレベルであり、しかもいつ起こっても不思議はないことも確かだ。ちなみに日本海溝沿いでは、宮城県沖の陸寄りでM7.4前後の地震が起きる30年以内確率が、80〜90%(76〜93%)から80〜90%程度以上(79〜95%)に上昇している。

いっぽう、「tenki.jp」の「震源地ごとの地震発生回数」によると、根室半島南東沖で、2025年10月25日のM5.8(最大震度5弱)から2026年1月27日のM5.0(最大震度3)までの3カ月間でM5以上の地震が6回起きている。いずれも津波を伴うことはなく被害もないが、この海域が巨大地震の警戒海域であることは間違いない。そして、冬期にも津波を伴う地震が発生し得ることは当然のことながら想定に入れなければならない。
北海道周辺において過去200年間に発生したマグニチュード6以上の地震41回の内、16回が冬期(12月〜3月)に発生し、その内6回は津波を伴う地震であった。

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“冬の地震/津波”へ厳重警戒・減災対策を
日本赤十字北海道看護大学「厳冬期避難所展開・宿泊演習2025」
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自然災害の経年感覚は100年ほどではないかと思われるが、この30年だけを見ても、阪神・淡路大震災は1月、東日本大震災は3月、令和6年能登半島地震は1月と、大規模災害は季節を問わない……本紙は3年前の2月1日発行号・巻頭企画で「厳冬期も“がまんさせない”避難所をめざして」を打った。そのなかで、旭川市で厳冬期に災害が発生したという想定で避難所生活を体験する訓練が行われたことを伝えている。これは旭川市が隔年で行っているもので、市民およそ20人が参加。旭川市は内陸部に位置し、津波被害は想定されていないが、厳しい寒さが想定されるところから避難所運営上の困難が想定される。
本紙2023年1月29日付け:厳冬期も“がまんさせない”避難所をめざして
本稿・下に配した写真は、本年1月18日〜19日に実施された日本赤十字北海道看護大学(北海道北見市)による「厳冬期避難所展開・宿泊演習2025(厳冬期災害演習2025)」のもの。日本赤十字看護大学付属災害救護研究所と、「食に関する社会課題解決」に関する協定を締結する日本最適化栄養食協会が同訓練に参加、最適化栄養食を提供して避難所での活用方法の検証に協力し、その報告写真から引用した。


日本赤十字北海道看護大学は、寒冷期に災害が生じた際の対応策を実践的に明らかにすることを目的に研究を推進していて、COVID-19による2年の中止を経て再開した2023年1月の11回目の厳冬期災害演習2023は、感染症対策を施したなかでマイナス17℃の環境における様々な検証を実施している。
本紙前述の記事では、2021年12月公表の日本海溝・千島海溝巨大地震の被害想定で、積雪で避難が遅れる冬の深夜に発生した場合、死者数は最大19万9千人とされたことについて、「南海トラフ巨大地震や首都直下型地震想定と異なるのは、低体温症要対処者や凍結時における津波による死者など、厳冬期の発災が想定されていることだ。
地震想定地域である東北・北海道は、10月下旬には最低気温がひとけたとなり、3月までその寒さが続く。すなわち1年の半分は、災害対策に寒さ対策が必要ということになる」とした。
また、「北海道に限らず日本海側の豪雪地帯などでも、厳冬期に大規模な津波が発生すれば、東日本大震災で見られた津波漂流物(車やがれきなど)に加えて雪氷・流氷も押し流され、建物への被害はもとより、降雪、道路凍結のもとでの住民避難行動(徒歩、車での避難、とくに高齢者、要援護者の避難)が困難となるのをはじめ、避難場所での暖房の確保や支援物資の受入れなど、積雪寒冷地特有の対応課題が浮上する」とした。
この100年余で、北海道周辺では冬の津波での被害事例が少なくとも4例(1894年、1923年、1952年、2011年)あった。このうち、1952年3月の十勝沖地震では、浜中村霧多布地区(当時)で津波とともに流氷が市街地に押し寄せ、家屋が破壊されるなどの被害が発生、高台への避難は困難を極め、避難所運営の困難さも推して知るべしだった。

2013年3月にまとめられた北海道開発局「雪氷期の津波沿岸防災対策」報告書は、雪氷期特有の“上乗せリスク”は、「施設被害の拡大」、「避難行動の遅れや阻害」、「啓開・復旧活動の遅延」とした。
これらに対応するためのソフト対策は「雪氷期特有の上乗せリスクを周知し、早期避難の啓発等の推進」、「雪氷期特有の物理現象に関する研究の推進」、「発災後の啓開・復旧体制の構築」が重要としている。
国土交通省北海道開発局:「雪氷期の津波沿岸防災対策の検討」報告書

〈2026. 02. 01. by Bosai Plus〉

