「ゆるぎない日本の再構築」…地殻変動の“ゆらぎ”に危機感
「災害対策は国防にひけをとらない」との覚悟はいま…
次世代への責務としての市民力
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●「災害から国民を守り、国を守ることは政治の究極の責任、
 軍事的・人為的な脅威から国や国民を守ることにひけをとらない」
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遡って2012年7月31日、中央防災会議専門調査会「防災対策推進検討会議」は「最終報告~ゆるぎない日本の再構築を目指して~」を決定・公表した。「最終報告」は、「東日本大震災を踏まえ、私たちが学び、将来に向かって約束として果たすべきことをまとめ、今後のわが国の防災対策の方向性を示した」とした。東日本大震災発災から1年4カ月ほどを経てまとめられたものだった(同専門調査会の設置は2011年10月11日)。
「防災対策推進検討会議」は専門調査会として初めて防災担当大臣など現職閣僚も委員に加えたことに特徴があった(官房長官を含む関係閣僚8人と学識経験者12人で構成)。最終報告は、第1章で災害対策の基本姿勢、第2章でそれを前提とした防災政策の基本原則を、第3章ではこうした基本姿勢や原則を踏まえて今後重点的に取り組むべき事項を、第4章では今後の防災対策の充実に向けた指針を示していた。
防災対策推進検討会議:「最終報告~ゆるぎない日本の再構築を目指して~」
その第1章は、副題を「災害に強くしなやかな社会の構築のために」とし、「災害から国民を守り、国を守ることは政治の究極の責任」と“宣言”。さらに災害の脅威と向き合うことは、「軍事的・人為的な脅威から国や国民を守ることに決してひけをとらない、国家の重大関心事項」とし、現職閣僚が委員に加わった結果の“為政者の覚悟の表明”と言えた。
東日本大震災から12年の2024年1月1日――国民が新年の挨拶を交わすさなか、最大震度7を観測した令和6年能登半島地震が発災した。半島という地勢・環境での「震度7」という最大級地震への政府の初動にゆるみはなかったか、既存不適格建物・住宅の放置、想定内ではあったはずの大津波(石川県地域防災計画の新たな被害想定への対応齟齬)、想定外とされがちな地盤隆起・液状化、土砂崩れ、想定外とは言えない避難所運営・被災者広域避難の備えの不備、被災者支援ボランティア活用の遅滞、そしてこれから大きな課題となる被災者生活・コミュニティの再建・復興という大きな課題、さらには志賀原発(そして地殻変動列島でのすべての原発稼働)“影響評価”……
阪神・淡路大震災から29年を経て、繰り返される自然災害の不条理に対峙するとき、本紙の脳裏には、冒頭で取り上げた「災害から国民を守り、国を守ることは政治の究極の責任」、そして災害の脅威と向き合うことは、「軍事的・人為的な脅威から国や国民を守ることに決してひけをとらない、国家の重大関心事項であるべき」がこだまする。あの“覚悟”は、10年ですでに喉元過ぎてしまったのか、と。
![[続々報]<br>能登半島地震に見るあるべき<br>「防災・支援」 P1 永野海弁護士の「被災者支援カード(おもて)」 - [続々報]<br>能登半島地震に見るあるべき<br>「防災・支援」](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2024/02/P1_%E6%B0%B8%E9%87%8E%E6%B5%B7%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%A2%AB%E7%81%BD%E8%80%85%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89%EF%BC%88%E3%81%8A%E3%82%82%E3%81%A6%EF%BC%89%E3%80%8D.jpg)
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●災害大国・日本の「防災予算」 この使い方で本当にいいのか
 防衛費は過去最高だけど…(東京新聞見出しより)
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東京新聞は1月12日付けで、「どうなってる? 国の防災予算 災害大国の日本、この使い方で本当にいいのか 防衛費は過去最高だけど…」との見出しで、次のような記事を掲載した。「災害大国の日本で、改めて防災の重要性が浮かび上がる。防衛費は2024年度当初予算で約7兆9000億円と過去最高を記録したが、防災関係の予算はどの程度なのか。災害を巡る予算運用は適切になされているのだろうか」――
同記事は、23年版防災白書によるとして、グラフにしてみると過去に二つの山があり、現在は下り斜面にいるとしている。最大のピークは阪神大震災直後の1995年度で、前年度から急増し、過去最多となる約7兆5000億円にのぼった。その後は減少傾向にあったが、東日本大震災直後の2011年度には再び増加に転じ、約4兆7000億円に達した。能登半島地震により24年度は再び増加する可能性が高いとしている。
 内閣府は防災関係予算を、防災・減災の調査研究の「科学技術の研究」、防災施設の整備や建物の耐震化、訓練や教育といった「災害予防」、地盤沈下対策や治水・治山事業などの「国土保全」、被災者の生活再建支援や災害復旧事業を含む「災害復旧等」の4項目に分類。年度を追って防災関係予算の使途の内訳を4項目別にみると、「災害復旧等」が自然災害の動向次第で1~7割と上下する一方、「科学技術の研究」は一貫して2%以下で推移。「災害予防」の比率が増加傾向にあるとともに、かつては関係予算の4~6割を占めていた「国土保全」は1~2割程度にとどまる。
 東日本大震災以降、災害予防の重要性が増したのは、発生を前提に被害軽減を図る「減災」の考え方が広まったからだ。
一般会計予算に占める防災関係予算の割合は、災害対策基本法が成立した60年代に比べて低下。集計が始まった62年度には8.1%だったが、22年度は2.2%にとどまる。
冒頭の「最終報告~ゆるぎない日本の再構築を目指して~」は、「災害を予防するための多面的な取組み」として、「防災の基本理念(減災、自助・共助・公助等)を法的に位置づける」、「自助を促す取組みや、自主防災組織、NGO、NPO、社団、財団、ボランティアへの支援などの共助を促すための取組みを進める」、「地域における自主防災組織など民間の団体や防災活動のリーダーの育成に努める」、「災害時に企業の果たすべき役割や責務について法的位置づけを検討する」とした。次世代に向けた全国民の責務とも言える。
“ゴールは遠いがしっかり見える”――地殻変動帯に乗って災害の多いわが国である。国はさらなる大規模災害に備え(国の盛衰を賭け!)、「災害犠牲者ゼロ」に向けて、「国防に匹敵する災害対策」を抜本的に見直し、真に「政治の究極の責任」を追求すべきだ。
〈2024. 02. 01. by Bosai Plus〉

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