南海トラフ巨大地震震源域に設置された観測網
――「DONET」、「S-net」に加わる「N-net」

 国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下「防災科研」)は10月17日、南海トラフ海底地震津波観測網「N-net」での沖合システム敷設工事を同月24日から開始すると発表した。文部科学省地球観測システム研究開発の一環である「南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の構築事業」は、2019年から海洋調査などを実施、今回の敷設工事を経て2025年3月末の整備完了を予定している。

P4 1 南海トラフ海底地震津波観測網(N net)イメージ(防災科研資料より) - 防災科研 「N-net」<br>地震や津波を<br>リアルタイムかつ直接検知
N-net敷設イメージ(防災科研資料より)
P4 2 気象庁の南海トラフ地震観測システム(内閣府資料より) - 防災科研 「N-net」<br>地震や津波を<br>リアルタイムかつ直接検知
南海トラフ地震観測システム(内閣府資料より)

 N-netは南海トラフ地震の想定震源域のうち、観測網がまだ設置されていない高知県の室戸岬沖から宮崎県沖の日向灘にかけてケーブル式の海底地震・津波観測システムを整備するもの。これまで観測装置の開発・製造や陸上局の整備等を進めてきたが、海底ケーブルに観測ノード(筐体に地震計や水圧計等を組み入れたもの)がつながれた沖合システムについての敷設工事に着手する。

 この敷設工事に伴い、気象庁は10月20日、一時的に緊急地震速報の発表が平時より最大で13秒程度遅くなる可能性があると発表しているが、N-netの整備完了で、地震の揺れや津波をこれまでより最大20分程度早く直接検知する。
 また、海底における微小な揺れや水圧の観測・分析により地震や津波のメカニズムを解明し、リアルタイム予測や長期予測を高度化する。

 東日本大震災を受け、防災科研は海域においては日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を北海道沖から房総半島沖までの海底に備、2016年4月には、紀伊半島沖から室戸岬沖にかけて整備された地震・津波観測監視システム(DONET)が海洋研究開発機構から防災科研に移管されている。

 なお、N-net敷設工事開始に伴い、気象庁は10月25日から11月20日にかけて紀伊半島の熊野灘沖に整備されたDONET1と、和歌山県の潮岬沖から室戸岬沖の観測網であるDONET2の全観測点が停止し、データを緊急地震速報の発表に活用できなくなる。このため期間中にDONET2の観測点を震源とする地震が発生した場合、緊急地震速報の発表が平時より遅くなる可能性があると発表している。

防災科研:南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)沖合システム敷設工事を開始へ

〈2023. 11. 22. by Bosai Plus

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