モロッコ地震・死者3000人超、リビア大洪水・死者9000人超
――いずれも救助難航
北アフリカのモロッコ中部で9月8日夜に発生した強い地震で、確認された死者は13日までに3000人を超えた。いっぽう、北アフリカのリビア東部で9月10日夜から11日にかけて発生した洪水で、確認された死者は13日までに約9000人に達したという。
ほぼ同時期に北アフリカで発生した大地震と大洪水――自然災害の脅威に現地はもとより、世界が驚愕している。
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●モロッコ中部の地震 耐震性に欠ける家屋で被害拡大
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米地質調査所(USGS)によると、モロッコ中部の地震はマグニチュード(M)6.8で、8日午後11時すぎ(日本時間9日午前6時すぎ)に発生した。震源地は観光都市マラケシュの南の高アトラス山脈で、震源の深さは約10km。地震はモロッコ全土や隣国アルジェリアでも感じられたが、被害が最も大きかったのはマラケシュ南方のハウズ州とチチャワ州だった。これらの州では山中に小さな村々が点在しており、多くの家屋が倒壊した。モロッコ内務省によると、死者の3分の2近くはハウズ州で確認されている。
被災地では生存者を探すために素手やシャベルでがれきを掘る住民や救助隊員の姿が見られたが、時間との戦いとなっている。世界保健機関(WHO)は11日、被災者は30万人以上にのぼり、そのうち約1万5000人が避難所で暮らしていると発表した。
今回の地震は、1960年に南西部アガディールを襲った地震で1万2000〜1万5000人が死亡して以来で、モロッコでは過去60年間で最大の被害を引き起こした。山中の史跡のティンメル・モスクも大きな被害を受け、世界遺産に登録されているマラケシュの旧市街でも建物が倒壊した。
山間部の村々が破壊され、道路が寸断されたことで救助活動が困難になっている。欧米やアラブ圏など数多くの国が救助隊や支援物資の派遣を申し出ていたが、モロッコ政府は当初、支援の殺到で混乱が生じるリスクがあるとし、「調整不足の支援は逆効果。現場の支援のニーズを慎重に検討した」として外国からの支援を限定的にしか受け入れなかった。
その後、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、スペイン、イギリスの4カ国に限って救助隊を受け入れると声明で明らかにした。モロッコの人権団体や野党は、政府の対応が遅れていると非難し、外国からの支援をもっと受け入れるよう求めている。
被災地では衛生状態も悪化しており、病気や感染症のリスクが高まっている。世界保健機関(WHO)は12日、被災地に医薬品や医療機器などを届けたほか、水質検査や衛生啓発なども行っていると発表した。WHOはまた、被災者に対する心理的ケアも重要だとし、メンタルヘルスや心理社会的支援に関するガイドラインも提供している。
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●リビア大洪水 “メディケーン”による暴風雨で2ダム決壊
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北アフリカのリビア東部で9月10日夜から11日にかけて発生した洪水で、確認された死者は13日までに約9000人に達している。負傷者は1万5000人以上にのぼり、被災者は50万人以上に達している。地中海沿いの都市デルナ(人口約10万人)では、ギリシャやトルコにも被害をもたらした「ストーム・ダニエル」と呼ばれる暴風雨(地中海のハリケーンを意味する「メディケーン」と呼ばれる台風のような低気圧による)により、市街地の上流にある2つのダムが決壊し、津波のような洪水が発生した。
救助活動は道路やインフラの損壊などで困難を極めている。リビアは中東民主化運動「アラブの春」(2010年から12年にかけてアラブ世界において発生した大規模反政府デモを主とした騒乱の総称)後の混乱で内戦状態に陥り、2020年の停戦後も、首都トリポリを拠点とする暫定政権と東部トブルクを拠点とする勢力が併存している。
〈2023. 09. 15. by Bosai Plus〉