P1a トルコ・ハタイ県(Hatay Turkey)の被災状況(東京大学・衛星画像より)/ - “同次元”としての<br> トルコ・シリア巨大地震

対岸の火事ではない大災害 地殻変動列島日本への警鐘

“わがこと”と考えるべきは、わが国もまた、
活断層帯=“同次元”上に位置しているという現実

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●本震 M7.8、後発地震 M7.5 巨大直下地震の連発
 死者 3万5000人超 被災者2600万人 厳寒下の救出・救援活動が
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 2023年2月6日現地時間午前4時17分(日本時間同10時17分)、トルコ南東部のシリアとの国境付近・ガズィアンテプ・カフラマンマラシュ県境付近を震央とするマグニチュード(M)7.8の巨大地震が発生、その約9時間後の13時24分(同19時24分)にカフラマンマラシュ県のエルビスタン地区で後発大地震(M7.5)が発生した。

P1a トルコ・ハタイ県(Hatay Turkey)の被災状況(東京大学・衛星画像より)/ - “同次元”としての<br> トルコ・シリア巨大地震
シリア国境沿いのハタイ県での高層マンションの倒壊の様子。東京大学大学院の渡邉英徳教授が衛星画像を解析、被害場所の画像をウェブサイトで公開した(画像クリックで同サイトへリンク)
P2 1 Fault LIne Nurdagi Turkey - “同次元”としての<br> トルコ・シリア巨大地震
渡邉英徳・東京大学大学院教授がプロットしたトルコ-シリア地震の衛星画像マップより。地表に現れた断層が画像中央を上下に貫いている

 2つの巨大地震とそれらに誘発された多くの余震により、トルコ南東部およびシリア北西部において、これまでに両国で合わせて3万5000人以上が死亡したとの両国当局の発表や報道があり(2月14日現在)、死者数は2011年東日本大震災(1万9759人、総務省消防庁まとめ)を大きく上回る。世界保健機関(WHO)の2月10日段階の集計によると、トルコとシリア両国の被災者数は2600万人にのぼるという見方を示している。

P2 1 トルコ・シリア地震での被害予測 USGS:Estimated Fatalities/Estimated Economic Losses - “同次元”としての<br> トルコ・シリア巨大地震
米国地質調査所(USGS)は、発災とほぼ同時に、死者・経済被害の予測(推計)をインフォグラフィックスで公表。トルコ・シリア地震での人的被害(死者数)の可能性を1万〜10万人、経済被害は100億〜1000億ドルと推計
P2 2 衛星「だいち2号」の観測データを分析した震源断層画像(国土地理院資料より) - “同次元”としての<br> トルコ・シリア巨大地震
国土地理院が衛星「だいち2号」の観測データを分析した画像。断層に沿って横ずれの地殻変動が生じた。下の赤い星がM7・8の地震の震源、上の水色の星はM7・5の地震の震源(国土地理院資料より)

 広域・大規模被害のなかで現地では、二次災害の危険を犯しながら懸命な救助活動が続いており、国内外からの緊急救助・被災者支援の動きも急となっているいっぽう、被災者は、厳寒のなかで避難先での生活が長期化することが懸念され、またシリアでは紛争地が被災しており、救援物資の搬入の困難さも伝えられている。

 救助・医療・物資などの緊急支援は各国から寄せられていて、わが国からの緊急支援も迅速に実施された。発災日の2月6日に国際緊急援助隊・救助チーム(警察・消防、海上保安庁の職員などからなる)の派遣を決定、7日にその第2陣派遣、10日に国際緊急援助隊・救助チームの派遣、12日にその第2陣派遣、13日には現地で活動するわが国の国際緊急援助隊・医療チームに必要な機材等を輸送するため自衛隊輸送機の派遣をしたほか、緊急援助物資(テント、毛布、スリーピングパッド)の供与を決定した。

 ちなみに、わが国の国際緊急援助隊(Japan Disaster Relief Team, JDR)は、海外で発生した自然災害や建築物の倒壊など人為的災害に対して行う主に人的支援で日本の国際貢献の一つ。被災国の要請で、政府が国際協力機構(JICA)の調整のもと援助の目的・役割に応じて、外務省が各関係省庁の協力のもとに編成。「救助チーム」「医療チーム」「専門家チーム」「感染症対策チーム」「自衛隊部隊」の5チームを派遣する。

外務省:緊急・人道支援 国際緊急援助

P2 4 UNDRR:トルコ・シリア地震についての声明サイトより - “同次元”としての<br> トルコ・シリア巨大地震
国連防災機関(UNDRR)はトルコ・シリア地震について、水鳥真美・国連防災担当事務総長特別代表兼国連防災事務所長の「声明」を発表、「今こそ、国際連帯が被災者への即時支援をまとめる時」とし、「できる限りの支援を呼びかける。このサポートは、対応フェーズが終了した後のコミュニティのよりよい復興を支援することにまで及ぶ必要がある」としている(画像はUNDRR HPより)

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●「同次元」のトルコ・シリア巨大地震
 対岸の火事ではない――活断層同源を忘れてはならない
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 トルコ・シリア巨大地震の死者は3万5000人を超えたとみられ、さらに増える見通しであり、現代災害史に刻まれる大災害となることは確実だ。忘れてはならないことは――いや、“わがこと”と考えるべきことは、わが国が今回の被災地と同様、活断層帯、地殻変動帯に位置しているということだ。“ほんの130余年前”に起こった1891年濃尾地震は、岐阜県美濃地方・愛知県尾張地方を震源とするM8.0の巨大地震で、日本史上最大(トルコ・シリア地震より規模は大きい)とされる内陸活断層地震だった。1997年兵庫県南部地震(M7.3、阪神・淡路大震災)は大都市直下を襲った。2016年熊本地震(M7.3 ※後震)、想定される南海トラフ巨大地震、首都直下地震も言わずもがな、である。

災害教訓の継承に関する専門調査会報告書:1891 濃尾地震

 参考まで、1950年以降に起こった地震規模を死者数で比較すると次のようだ(米国 Forbes誌より引用)。

  1. 唐山地震(1976年7月28日、中国河北省、M7.8):65万5000人
     *中国の公式発表は死者24万2769人だが、推定された実数は異なる
  2. ハイチ地震(2010年1月12日、ポルトープランス、M7.0):31万6000人
     *数字は公式発表。22万人近くだったとする推定もある
  3. スマトラ島沖地震津波(2004年12月26日、インドネシア・スマトラ島沖、インド領アンダマン諸島、M9.1):28万3000人
     *マグニチュードは1950年以降で3番目の規模
  4. 四川地震(2008年5月12日、中国、M7.9):8万7600人
  5. パキスタン地震(2005年、10月8日、M7.6):8万6000人
     *死者数は8万7000人超とする推定も
  6. アンカシュ地震(1970年5月31日、ペルー、M7.9):7万人
     *うち5万人の死亡を確認、残り2万人は行方不明後に死亡と推定
  7. マンジル・ルドバール地震(1990年6月20日、イラン、M7.4):5万人
  8. バム地震(2003年12月26日、イラン、M6.6):3万4000人
     *2020年にイラン政府が公式死者数を発表
  9. アルメニア地震(1988年12月7日、スピタク、M6.8):2万5000人
  10. グアテマラ地震(1976年2月4日、ロスアマテス、M7.6):2万3000人

     なお、マグニチュードの大きさでは、1960年5月のチリ地震がM9.5で観測史上最大で、次が1964年3月のアラスカ地震(M9.2)。死者はそれぞれ1800人と131人。
     2011年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)はM9.1で規模は4番目、日本の警察発表によると1万5900人が亡くなり、2523人が行方不明。

〈2023. 02. 15. by Bosai Plus

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