P5 1 「Society 5」 640x350 - 《 2023特別構成 第2弾 防災DX-4 》<br>情報が災害対応現場を牽引する

「Society 5.0」でも一人ひとりの自助力を上げることが大切

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●防災科研、「Society 5.0」に呼応、次のステージは「CPS4D」
 災害をしなやかに乗り切る力『レジリエンス』とは
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 防災に関するデジタル技術・ICT(情報通信技術)として、住民レベルでの既存のサービスシステムとしては――エリアメール・緊急速報メールを活用した災害警戒情報の提供、地上デジタルTVを活用した災害情報の配信、ワンセグ放送を活用した災害警戒情報の配信、同報系防災無線での災害情報・避難情報の提供、災害用伝言ダイヤル・伝言サービスでの安否確認、防災メールによる災害警戒情報、ラジオによる災害情報・避難情報の配信などがある。
 だが、あえて「防災DX」という場合、これらを統合した、より使いでのあるシステムがめざすべき「防災DX」像となる。

 国は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society)として「Society 5.0」の概念を打ち出す。これは、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会を指し、第5期科学技術基本計画においてわが国がめざすべき未来社会の姿として提唱されている。

P5 1 「Society 5」 - 《 2023特別構成 第2弾 防災DX-4 》<br>情報が災害対応現場を牽引する
「Society 5.0」での防災の新たな価値の事例(内閣府資料より)

 本稿前半で紹介した防災科研の国家プロジェクトは災害対応現場が情報を活用するための「SIP4D」だが、その次の段階は国の「Society 5.0」に呼応して、情報が災害対応現場を牽引する「CPS4D」(Cyber- Physical Synthesis for Disaster Resilience/防災版サイバーフィジカルシステム)だと位置づけられている。

 国の「Society 5.0」は「新たな価値の事例(防災)」として、「Society 5.0」では人工衛星、地上の気象レーダー、ドローンによる被災地観測、建物センサーからの被害情報、車からの道路の被害情報などを含むビッグデータをAIで解析、「被害状況を踏まえ、個人のスマホ等を通じて一人ひとりへ避難情報が提供され、安全に避難所まで移動」、「アシストスーツや救助ロボットにより被災者の早急な発見と被災した建物からの迅速な救助」、「ドローンや自動配送車などによる救援物資の最適配送」などができるようになり、社会全体としても被害の軽減や早期復興を図ることが可能となるとする。 

P5 2 「SIP4D」から「CPS4D」への展開(防災科研資料より) - 《 2023特別構成 第2弾 防災DX-4 》<br>情報が災害対応現場を牽引する
「SIP4D」から「CPS4D」への展開・概念図(防災科研資料より)

 いっぽう防災科研には、現状では「SIP4D」で提供するデータへのアクセスは災害対応機関に限られていることから、一般国民により広く、必要な情報をわかりやすく共有できるシステムやツールの開発が望まれる。

P5 3 防災科研『安全・安心な社会実現のための防災科学技術』(表紙) - 《 2023特別構成 第2弾 防災DX-4 》<br>情報が災害対応現場を牽引する
防災科研「要覧:SCIENCE FOR RESILIENCE」(表紙より)。防災科研の業務について、目的や体制などの組織概要や、各センター・プロジェクトの研究活動の概要をまとめている

 防災科研は「『レジリエンス』を社会に」の標語で、「災害をしなやかに乗り切る力『レジリエンス』という概念のもと、総合的に進めていくこと」としている。そして、「防災で最も大切なのは、一人ひとりの自助力を上げること。災害に対して正しい認識を持ったうえで、必要な備えをしておくこと、万が一災害が起きても、めげずに苦境を乗り越えていく力を持っておくことが大切。政府や自治体を中心とした公助には限界があり、顔見知りが助け合う互助、見知らぬ者同士も助け合う共助も考えなければならない」と。

 また、防災科研が共助の中でもとくに注目しているのが「企業の力」だという。「物流やエネルギーなどの企業の事業継続性が高まれば地域も強くなる。そうした企業のレジリエンスを助ける仕組みづくりも防災科研の取組みの一つ」としている。

防災科研:防災科研について

〈2023. 01. 19. by Bosai Plus

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