新潟県中越沖地震での避難所

認定状況のばらつきは解消されそうもないが、
避難所運営や要援護者支援の参考事例に

●「人災」としての「災害関連死」 どう認定するか

 災害の直接死に対する「関連死」の概念は、1995年阪神・淡路大震災で生まれた。同震災での死者数は6434人、そのうち関連死(震災関連死)として認定された死者数は約900人(内閣府資料より)。当時、神戸、尼崎、西宮など6市で認定のための委員会等が設置されて医師・弁護士などによる判定が行われたが、その認定基準が明確でなかったため、死亡統計の解析などからはさらに多い可能性も指摘されている。災害関連死の多くは心疾患・肺炎であり、高齢者が多かった。

P4 2 熊本地震における震災関連死の概況(事例集より) - むずかしい「災害関連死」<br>認定基準策定 代わりに「事例集」

 その後に起こった災害では、災害関連死の認定作業は県や市町村が担い、それぞれの有識者らの審査会で、災害との因果関係が認められた死亡事案を災害弔慰金の支給対象にすることで認定してきた。災害関連死の基本的な定義としては、「災害による直接の被害ではなく、避難途中や避難後に死亡した者の死因について、災害との因果関係が認められるもの」で、災害弔慰金の支給対象となる場合を言うことが多い。

 災害関連死が注目を集めた2004年新潟県中越地震では、死者68人のうち52人が「災害関連死」とされた。このとき、死亡時期を巡って「発生から半年」が一つの目安とされ、長岡市が「半年以上は関連死でないと推定」とする「長岡基準」と呼ばれる基準がつくられた。しかし、「長岡基準」は2011年東日本大震災でも各自治体が参考にしたが、被害規模や原発避難の実態とそぐわない面が多々あって、個別事情を踏まえて審査している自治体が少なくない。東日本大震災では死者1万5859人・行方不明者3021人(2012年5月30日警察庁発表)とされているが、震災と原発事故による関連死は2020年度までに全国で3773人にのぼり、認定申請はいまなお続いている。

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 また、2016年熊本地震の死者数270人で、その内訳は「警察が検視により確認している死者数50人、市町村において災害弔慰金が認められたもの215人、6月19日から6月25日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震との関連が認められた死者数5人」(熊本県、2019年3月13日現在)となり、地震後の大雨という複合災害のケースも関連死としてカウントされている。「災害関連死」は「人災」とも言え、これを“ゼロ”にするためには、過去の事例の検証は欠かせない。

 こうした状況を受けて自治体からは、「国が災害関連死の認定基準を設けてほしい」との声が上がったが、内閣府は統一的な基準を策定しない方針を固める代わりに、過去の認定例などをまとめた「災害関連死事例集」を作成、本年4月30日、公表した。市町村における災害関連死認定の考え方、災害関連死の事例、災害関連死にかかる裁判例を主に構成。参考として、東日本大震災における震災関連死に関する報告、福島県における震災関連死防止のための検討報告、震災関連死の概況についてなども掲載。

 これで認定状況のばらつきは解消されそうもないが、地域防災での避難所運営や要援護者支援での参考事例とすることはできる。

内閣府(防災担当):災害関連死事例集

〈2021. 12. 15. by Bosai Plus

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