「2050年のサイバネティック・アバター生活」よりシーン1「災害救助」

防災に“破壊的イノベーション”は可能か
内閣府「ムーンショット型研究開発制度」が
“避けた”(?)防災テーマ

大規模自然災害対応の“ムーンショット”を公約(?)

 菅 義偉内閣で昨年(2020年)9月に情報通信技術(IT)政策担当大臣、内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度)、そして新設されたデジタル改革担当大臣に就任した平井卓也氏は、“デジタル、ITに通じている”とされる。第4次安倍改造内閣ではクールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策担当の内閣府特命担当大臣を務めたが、2019年2月の記者会見で「ムーンショット型研究開発制度」について触れ、「本制度では、わが国の未来社会を展望し、少子高齢化や大規模自然災害対応のような困難な社会問題の解決等をめざし、人びとを魅了する野心的な目標・構想を国が掲げ、国内外から広く研究開発のアイデア等を募集する」とした。

P2 1 ムーンショット型研究開発制度のロゴ - 「ムーンショット」――<br>明日の、30年後・50年後の防災はいかに
ムーンショット型研究開発制度のロゴ

 内閣府によれば、「ムーンショット型研究開発制度」とは、「わが国発の破壊的イノベーションの創出をめざすもの」で、従来技術の延長ではない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進する制度だとし、2019年4月にその研究テーマを公募するかたちで一般に公表した。

 用語としての「ムーンショット」とは、米国の宇宙船アポロ11号が1969年に月面着陸に成功したことを指し、困難なプロジェクトへの挑戦を英語で「ムーンショット」と称えたことにちなむ。それからちょうど50年を経たタイミングで、日本でもこれにちなんで、“破壊的”な研究開発プロジェクトに挑戦しようというものだ。

 内閣府は「ムーンショット目標」として下記の7つを設定しているが、去る2月8日、7つのムーンショット目標のプロジェクトマネジャー(計47人)が揃い、研究開発プロジェクトが本格的に始動したと発表した。
・目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
・目標2:2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
・目標3:2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
・目標4:2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
・目標5:2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
・目標6:2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
・目標7:2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現

P2 2 ムーンショット目標3 - 「ムーンショット」――<br>明日の、30年後・50年後の防災はいかに
「ムーンショット目標3」が実現した社会のイメージ画像
P2 3 「2050年のサイバネティック・アバター生活」よりシーン1「災害救助」 - 「ムーンショット」――<br>明日の、30年後・50年後の防災はいかに
目標3「2050年のサイバネティック・アバター生活」よりシーン1「災害救助」のイメージ画像

 ただ、この7つには、平井大臣が予告した「大規模自然災害対応」のテーマが見当たらない。2050年までにおそらくほぼ確実に南海トラフ巨大地震、あるいは首都直下地震などが起こり、温暖化を背景に気象災害の激甚化でさらなる社会的困難が増すことが想定されるが、こうした自然災害から人びとの命を守り、安全、安心環境を創出することこそ、最優先の“破壊的なイノベーション”になるはずだが。

>>内閣府:ムーンショット型研究開発制度

〈2021. 02. 15. by Bosai Plus

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