防災・家バンク(日本ムービングハウス協会HPより)

平時はホテルや研修施設、災害時は応急仮設住宅に

官民連携・PFIやPPP活用の“社会的備蓄” 今後の展開に注目!

日本ムービングハウス協会が推進役
 官民連携の「社会的備蓄」による災害対策


 「防災・家バンク」とは、ムービングハウスを用いた応急仮設住宅の普及と社会的備蓄をめざす官民連携の取組みである。ムービングハウス自体もこれまであまり耳慣れない用語だが、ここでは、いわゆるトレーラーハウスやコンテナハウスとは異にしつつ(国際規格の海上輸送コンテナと形状・サイズは同じに設計)、「完成した一般住宅を応急仮設住宅として利用する」というアプローチで、災害時に迅速に被災地への設置を可能にした新しい形の応急仮設住宅を言う。その形状からは移動式木造住宅であるが、本項では「ムービングハウス」を応急仮設住宅の新しいコンセプトを表す新語として採用することにする。

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防災・家バンク(日本ムービングハウス協会HPより)

 ムービングハウスは、東日本大震災をきっかけに開発が進み、移動式住宅関連の企業約40社が加盟する日本ムービングハウス協会(北海道千歳市)が「防災・家バンク」の名のもとに推進役を担っている。同協会によれば、「防災・家バンク」とは、自治体や企業などが遊休地にこのムービングハウスを設置し、簡易ホテルや宿泊研修施設等として利用するいっぽう、災害時にはすぐに被災地に輸送し、災害救助法に基づく応急仮設住宅として被災自治体に有償で貸し出すプロジェクトで、いま各地でこの設置・検討が始められているという。

 直近では、茨城県小美玉市に約50棟規模で、関東で初めてという「防災・家バンク小美玉研修所」がこのほど開設された。5月には営業開始の予定で、通常はホテルや事務スペースとして利用、災害時には避難者の受け入れや、解体して被災地へトレーラーで運び、仮設住宅や災害復興住宅として提供する予定だ。
 これを手がけたのは協会と、協会メンバーでもある開発元の「アーキビジョン21」(千歳市)で、協会はこれまで、北海道や宮城県、長野県に備蓄拠点を設置していて、小美玉市は6番目とのこと。

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防災・家バンク(日本ムービングハウス協会HPより)
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防災・家バンク(日本ムービングハウス協会HPより)

 協会は、2018年西日本豪雨や同年の北海道胆振東部地震の被災地にもムービングハウスを提供し、19年台風19号で被災した茨城県常陸大宮市にも9軒を設置していて、現在、計18人が避難生活をしているという。また同県内では、境町など4市町が協会と災害時の貸し出しなどに関する協定を結んでいて、境町では、東京五輪の事前キャンプに訪れるアルゼンチン選手らの宿泊先として全47室のホテルを整備中だ。
 想定される首都直下型地震の発生に備えては都心からの災害疎開施設として、また、東海村の原子力施設での事故時には、広域避難の受け入れ施設として利用することも可能としている。

 PFI(Private Finance Initiative:民間資金等活用事業)やPPP(Public Private Partnership:官 民連携)など、民間資金活用による施設整備・公共サービスの提供に注目が集まる時代、「防災・家バンク」もまさに、災害に備える社会的備蓄と言えそうだ。「防災・家バンク」の普及に向けて、すでに全国の自治体や製造業、運送業、旅館業などの民間事業との官民連携のネットワークが広がりつつあり、年内にも、モデルハウスを兼ねた宿泊研修施設や、自治体保有の公園内の合宿研修施設、テレワーク施設、移住促進の体験宿泊施設のオープン計画が進んでいるという。

>>日本ムービングハウス協会:「防災・家バンク」

〈2020. 03. 03. by Bosai Plus

This article has 1 comment

  1. とても素晴らしい取り組みですね!感銘受けてます.福島県川内村(放射能漏れ事故受け全村避難を経験した村役場)では、宿泊施設整備で、悩んでると、私の協会現地メンバーから、連絡来てます!ので、御社情報提供します!

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