WHO:新型コロナウイルスの新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真像(Getty-images)

不安・恐怖、流言、過剰反応の感染―
情報を精査し、感染者の人権を守る。

「正しくおそれる」ことはむずかしい―
災害医学会声明の波紋に見る“過剰反応”の感染

【 日々刻々 更新される情報 国難に立ち向かうために情報の精査を 】

不意の国難の浮上 ここ1、2週間がヤマ場?

 「Covid-19」(新型コロナウイルス、または新型肺炎)が国難として急浮上している。情勢は日々刻々、新局面を迎えており、政府・厚生労働省の決定・発表情報も朝令暮改の様相を呈している。いま私たち個人に求められる対処・対応法とは――
 2月27日、安倍晋三首相は、総理大臣官邸で第15回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催し、「ここ1、2週間が極めて重要な時期。このため、政府としてはなによりも、子どもたちの健康・安全を第一に考え、多くの子どもたちや教職員が、日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請」すると宣言した。
 いっぽう、鈴木直道北海道知事は28日、北海道での新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今週末の外出自粛を求める「新型コロナウイルス緊急事態宣言」を出した。29日には、東北地方で初の感染者が確認されている。
 本紙は2月29日現在の状況をもとに本項を構成していることをお断りしたうえで、本紙独自の視点から、このたびの「Covid-19」にかかわる動向を以下、概観する。

CDC:コロナウイルスの超微構造形態画像(イラスト)
CDC:コロナウイルスの超微構造形態画像(イラスト)

感染症対策で家庭内ペットをどう扱うか わが国のペット事情と対処法

 まず、本紙が新型コロナウイルスを「Covid-19」と表記するのは、言うまでもなく世界保健機関(WHO)が正式名称として採用したからだ。世界共通の名称として「Covid-19」があるにもかかわらず、日本の多くのメディアは、「新型コロナウイルス」あるいは「新型肺炎」とするのは、「Covid-19」が発音しにくいからかもしれない。また、1月31日に、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern/フェイク)を宣言したが、その日本語語感からか(フェイク=偽物)、これまた、日本のメディアが“フェイク”を紹介することはほとんどなかった。
 本紙はあえてこの項を「Covid-19」で通すが、その意図としては、国際用語としての「Covid-19」を念頭に置くと、WHOやCDC(米国疾病対策センター)のような海外の権威ある専門機関の動向との比較で、わが国の感染症対策を相対的に観察できるという複眼的な視点がある。例えば、マスクひとつとっても、その有効性についてCDCは、「感染予防には有効ではない」としている。ニュアンスの違いはあるが、中国やわが国でマスクをしていない人に対する一部の行きすぎた拒否反応を抑制する意味では、CDCのこうした見解を知っておくことは有効と思われる。

 また、例えば、WHOの「Covid-19」対処法についてのオンライントレーニングでは、「家庭内のペットに触れないように」というアドバイスがあるが、日本での厚労省などの対処法ではペットに 関連する記述はないようだ。災害対策でのペット避難同行が大きな課題になるわが国で、感染症対策としてペットの扱い方について解説がないのは不思議ではないか。

WHO「Online training as a weapon to fight the new coronavirus」より
WHO「Online training as a weapon to fight the new coronavirus」より

日本災害医学会の「医療関係者への不当な批判に対する声明」

 「Covid-19」の本紙の独自の視点というのは、ここでは感染者の「人権」の問題である。ダイヤモンド・プリンセスでの乗船客・乗組員の扱いについて、人権の観点から多くの課題が指摘された。そのひとつひとつをここではあげられないが、驚くべきは、2月22日の日本災害医学会による「新型コロナウイルス感染症対応に従事する医療関係者への不当な批判に対する声明」であった。全文はリンク先で閲覧していただけるので、ここでは要点を掲載して本紙の「感染症と人権」への問題意識を明らかにしたい。
 以下、声明文の要点。

 「COVID-19の蔓延を受けて、日本政府によるチャーター便による帰国者の一時的な隔離施設収容と、ダイヤモンド・プリンセス号が神奈川県横浜港入港後2週間に及ぶ検疫が実施されました。現場に参加した本学会員をはじめとする様々な医療関係者は、健康管理および相談や、医療救護班活動、重篤化する症例の搬送業務、搬送調整業務、処方薬調整、外来や入院患者さんの対応などに尽力しています。(中略)もしこうした活動がなかった場合には、より多くの乗客・乗員が重症化し、人命が失われた可能性が高いことは想像に難くありません。
 しかし、現場で人命を救うために自分の身を危険にさらして活動した医療者の中から、職場において「バイ菌」扱いされるなどのいじめ行為や、子供の保育園・幼稚園から登園自粛を求められる事態、さらに職場管理者に現場活動したことに謝罪を求められるなど、信じがたい不当な扱いを受けた事案が報告されています。当事者たちからは悲鳴に近い悲しい報告が寄せられ、同じ医療者として看過できない行為であります。もはや人権問題ととらえるべき事態であり、強く抗議するとともに改善を求めたいと考えます。
 当学会としては今回の不幸なウイルス蔓延状態が一刻も早く収束することを願うとともに、人道的活動に参加された全ての方々に対して心より敬意を表します。偏見や先入観に基づく批判が行われることは決して許されず、また万が一健康被害が発生した際の補償に不安がないような対応を、広く社会に求めます」――

東北医科薬科大学病院が発行した「新型コロナウイルス感染症~市民向け感染予防ハンドブック」の表紙
東北医科薬科大学病院が発行した「新型コロナウイルス感染症~市民向け感染予防ハンドブック」の表紙

 「Covid-19」の正体、その感染力、症状、潜伏期間等々、新型ということもあってわからないことが多い。むしろ、わからないのが新型ウイルスの正体なのだ。新型コロナウイルスを巡っては、SNSなどのソーシャルメディアがかつてない速度で世界中に情報を拡散している。WHOはその状況を「巨大な『インフォデミック(infodemic)』」と呼んでいる。
 本紙は今回の新型コロナウイルス感染症について2月1日付け記事で「正しく恐れることはむずかしい。だから、想定・想定外を常に更新しつつ自ら判断を」とした。地震・津波や洪水などの自然災害は社会の脆弱性を突いて被害を起こすと言われるが、このウイルスにはだれでも感染し得る。海外では副大統領(イラン)への感染が確認され、テレビ中継の記者会見に臨んでいる最中に感染症状が起こった保健次官(イラン)がいる。

 「不安への過剰反応」の感染は、人権保護と背中合わせだけに、心して対応しなければならない“インフォデミック”である。

>>日本災害医学会:新型コロナウイルス感染症対応に従事する医療関係者への不当な批判に対する声明

〈2020. 03. 01. by Bosai Plus

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