国土交通省「自動車が冠水した道路を走行する場合に発生する不具合について」より

「避難勧告」はあなたの避難に役立っていますか? ご近所では?

気象情報から避難勧告、警戒レベル“四の五”など――
よくわからないというのが問題!

【 避難情報は、あなたの避難にどこまで有効か 】

●要するに、いまの「避難勧告」や「警戒レベル」など避難情報は、
 住民に“効かない”…


 2019年の台風15号、19号など、広域豪雨災害などを教訓として、避難対策の強化を検討するために中央防災会議 防災対策実⾏会議のもとに設置された「令和元年台⾵第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ」(主査:⽥中 淳・東京⼤学⼤学院情報学環総合防災情報研究センター⻑ 教授。以下「WG」)。その論点として、「災害リスクととるべき⾏動の理解促進」、「⾼齢者等の避難の実効性の確保」、「わかりやすい防災情報の提供(避難勧告・避難指⽰のあり⽅)」などがあげられている。

 同WGの第2回会合(2020年2月5日)で示された台風被災地の住民に対する国のアンケート結果が話題を呼んでいる。同アンケートは本(2020)年1月にインターネットで実施、台風19号で被害があった長野市や福島県いわき市、郡山市、千葉県市原市などに住む3078人から回答を得た。
 このアンケート結果は、地域で防災啓発活動を実践する防災士など地域活動家に大きなヒントを与えてくれるだろう。すなわち、避難情報について、住民に向けた事前・災中の「翻訳・解説・啓発」において、ポイント(力点の置き方など)が示されているからだ。

 以下、主なアンケート結果と同WGによる「分析・考察」のポイントは次のようであり、参考に供したい。同アンケートの詳しい内容は下記参照。

>>避難に関するWG:住民向けアンケート結果

国や自治体が発する避難情報・警戒情報が住民に伝わっていないことが、災害が起こるごとに顕在化するのはなぜか。行 政側の意図と住民の受けとめの間にズレがある? 例えば「雨中の避難」は命にかかわってもイヤというのが人情であるならば、「雨が降り出す前に避難」すればより行動がしやすい。浸水想定地域に住まいがあれば、降り出す前に、浸水するほどの「雨量の推定」段階で避難はできないものか……防災士に聞いてみよう

●避難の手段で「車」は実はあぶない 「車は浸水に弱い」ことを知らせたい
Q1 避難したか
・ハザードマップを見たことがあり、かつ自宅が洪水の危険または土砂災害の危険がある区域(浸水想定区域、土砂災害警戒区域等)に入っていると回答した人のうち4割強の人がなんらかの避難行動を行った
・ハザードマップを見たことがない、自分が住む市町村ではハザードマップ等が公表されていないと回答した人のうち、なんらかの避難行動を行った人は1~2割で、ハザードマップを見たことがあり、自宅の災害リスクを認識していた人とそうでない人とでは避難行動に大きな差がある
Q2 いつ避難したか
・立退き避難をした人のうち、まだそれほど降雨が強くない10月11日の段階から3割以上の人が避難
Q3 どこに避難したか
・自宅以外の場所に避難した人のうち44.3%の人が「市・町村が指定した避難場所・避難所」に避難。そのうち約6割の人がその理由の一つとして「そこに避難するように指定されているため」を挙げている
・親戚・友人宅に避難した人は31.2%
Q4 避難の手段
・車で立退き避難した人が75.5%。そのうち「避難先まで安全にいけると思った」ために車を選択した人は約6割。いっぽう、車での移動途中になんらかの危険性があった人は約6割
・大雨、洪水時の車での移動は安全なように思われているが、安全とは感じられていない人もいた

被災地住民へのアンケート結果より「避難の手段」
アンケートより「ハザードマップ等の資料の認知」

●「警戒レベル4」では四の五の言わず「避難」! 「5」は命の危険!
Q5 警戒レベルの認知
・警戒レベルの理解の度合いに差はあるものの、9割以上の人が警戒レベルを認知している
Q6 警戒レベルによりわかりやすくなったか
・「非常にわかりやすくなった」、「どちらかといえばわかりやすくなった」を合わせると7割近くの人がわかりやすくなったと回答
Q7 警戒レベル4が求める行動
・避難勧告は「避難を開始すべきタイミングであり速やかに避難する」、避難指示(緊急)は「避難を開始すべきタイミングを過ぎており身の安全に配慮しつつ速やかに避難する」が正しい回答
・正しく認識していた人はいずれも4人に1人程度
・避難指示(緊急)については「避難を開始すべきタイミングであり速やかに避難する」と誤って認識している人が25.4%と一番割合として多かった
・避難勧告および避難指示(緊急)の両方を正しく認識していたのは17.7%
Q8 実際に避難する警戒レベル
・避難を開始すべきタイミングは警戒レベル4「避難勧告」であるが、約4割が警戒レベル4「避難指示(緊急)」、1割強が警戒レベル5「災害発生情報」で避難するとしており、約半数(52.2%)が望ましくない回答
 なお、WGでは、<警戒レベル関係の問の全体考察(Q4からQ7) >として次のようにまとめている。
・9割の人が「警戒レベル」を認知し、7割が分かりやすくなった、と回答しているが、警戒レベル4の避難勧告・避難指示(緊急)を正確に理解している人は2割弱であり、約半数が望ましくない回答をしていることから、一定の周知はなされたものの、その内容が十分に理解されているとは言えない

ハザードマップは見た(眺めた)だけではダメ
 周辺、地域の安全な場所の確認を
Q9 ハザードマップ等の資料の認知
・ハザードマップを「見たことはあるが、避難の参考にしていない」、「見たことがあり、避難の参考にしている」を合わせると75.5%はハザードマップを見たことがあると回答
・ハザードマップを見たことがある人のうち、ハザードマップになにかしらの課題があると考えている人が約7割近く
・ハザードマップを見ているものの、避難の参考にしていない人のうち、27.7%の人は、自宅が浸水想定区域に入っているかわからないと回答
・ハザードマップの更なる活用等が望まれる
Q10 指定緊急避難場所と指定避難所の違いの認知
・指定緊急避難場所と指定避難所の違いについて「2種類あることは知っているが、役割の違いは知らない」、「2種類あることも、役割の違いも知らない」の回答を合わせると約9割を超え、ほとんどの人が違いを理解していない
Q11 「全員避難」の認識
・全員避難を「災害の危険がないところにいる人も避難する必要がある」と認識している人が約4割、「わからない」と回答した人が約2割おり、合わせて約6割の人に適切に伝わっていない
Q12 警戒レベル5が求める行動の認識
・警戒レベル5「災害発生情報」について「市町村が指定した避難場所等に速やかに避難したほうがよい」と回答した人が約4割弱、「わからない」と回答した人が約2割弱であり、合わせて5割強の人に適切に伝わっていない

車での避難は実は危ない

 このアンケート結果から、例えば車での避難は改めてリスクが大きいことがわかる。車は確かに便利ではあるが、“鎧”あるいは“頑丈な船”では決してなく、むしろ人にそういう錯誤をもたらすことがこわい。浸水ハザードマップについても、今後の課題として、ITC、AI技術を使って街区の危険度を浸水深ごとにゾーニングして、住民の位置情報別に避難情報をピンポイントで発令できないものか。
 WGではこうした課題への「対応案(骨子)」を示していて、「自らの命は自らが守る意識について社会全体での共有を図る必要がある」、「ハザードマップを用いて一人ひとりがどのような避難行動をとればいいかをわかりやすく解説した避難行動判定フローを作成し、ハザードマップとともに地域で配布・回覧する」、また避難情報の発令や避難の呼びかけについては、「わかりやすく解説した資料を作成し、ハザードマップとともに地域で配布・回覧する」などとしている。
 こうした国の対応案をわかりやすく”翻訳”して直接住民に解説し、住民とともに理解を深める仲介者役こそが、まさに防災士など地域防災の活動家であることは言うまでもない。

>>令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ
>>避難に関するWG:資料5 住民向けアンケート結果

〈2020. 02. 15. by Bosai Plus

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