沖縄県「サーターアンダギー」

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文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)                     

 沖縄県は日本の南西端に位置し、沖縄諸島、先島諸島、大東諸島、尖閣諸島など約160の亜熱帯の島々からなる県です。1429年に中国や東南アジアの影響を受けて独特の文化を持つ琉球王国を築きますが、途中で薩摩藩の支配があり日本の文化が流れ込みます。その後は廃藩置県による琉球藩の廃止と沖縄県の誕生、太平洋戦争後のアメリカ統治といった苦難の歴史をたどり、27年にわたる統治の後、1972年にふたたび日本に帰属しました(沖縄県ホームページ、以下HP「沖縄こどもランド」歴史概要参照)。

 県庁所在地は沖縄本島南部の那覇市(琉球王国の首都「首里」がかつてあった場所)で、美しい海と固有の自然がある沖縄は日本屈指の観光地として賑わいを見せています。南部には沖縄戦の犠牲となった沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒・職員を祀(まつ)る「ひめゆりの塔」があり、戦争の悲惨さを現代に伝えています(株式会社人文社発売、「ふるさとの文化遺産 郷土資料事典 沖縄県」参照)。

 一方、沖縄本島北部は酸性の強い赤土でパイナップルの栽培が盛んです。また北部地域は山原(ヤンバル)と呼ばれ自然が多く、森の中には世界中でここでしか生息しないヤンバルクイナや日本最大の甲中・ヤンバルテナガコガネなどが住んでいます(環境省HP、ヤンバルテナガコガネ参照)。

 沖縄地方は昔から台風が多く、年平均で7.6個も接近することで知られています。そのため伝統的な家は赤瓦を漆喰で固めた屋根を持つ木造住宅で、家の周囲は石垣に囲まれています。さらに1970年代以降は台風対策として鉄筋コンクリート住宅が多くつくられるようになりました。

 過去の大きな台風として知られるのは1959年9月15日~18日の「宮古島台風」です。宮古島で最低気圧が908.1hp(ヘクトパスカル)、最大瞬間風速64.8m/sを記録し、住家損壊は1万6632棟と島の7割の家が被害に遭い、犠牲者は47名、行方不明者52名、負傷者509名でした。そして沖縄地方の戦後最大の台風といえば「第2宮古島台風」です。1966年9月5日9時頃に宮古島付近に接近した台風は、最大瞬間風速が85.3m/sと日本の観測史上1位を記録。負傷者41名、住家損壊は7765棟、7割のさとうきびの収穫が不能となる大きな被害を受けました(気象庁HP、「災害をもたらした気象事例 昭和20~63年」参照)。

 宮古島台風、第2宮古島台風と強烈な台風に2度も襲撃されて疲弊していた沖縄を1968年9月22日、「第3宮古島台風」が襲います。犠牲者11名、負傷者80名、住家損壊5715棟、浸水被害は1万5322棟にも及びました。沖縄に甚大な被害をもたらす自然災害のトップは台風だと言っても過言ではありません。

沖縄県「サーターアンダギー」 - 〈 復興わがまち ご当地ごはん! 〉  【第39回】 沖縄県「サーターアンダギー」
沖縄県「サーターアンダギー」

料理名:サーターアンダギー(沖縄県)

 「サーターアンダギー」は沖縄の方言でサーターが砂糖、アンダーが油、アギーが揚げ物という言葉を組み合わせた「砂糖油揚げ(つまり砂糖入り天婦羅?)」という名のお菓子です。材料に水を入れずにつくるためドーナツよりも外側はもっとサックリとして中身は密度が高くてぎっしりとしています。

 琉球王朝時代に客人をもてなすお菓子だったようで当時は高価だったお砂糖がたっぷり入っていました。中国の「開口笑(かいこうしょう)」というお菓子とよく似ているため琉球時代に中国より伝わったのではないかという説が濃厚です。

 今でも沖縄の家庭で日常的につくられていますし、結納ではカタハランブーというお菓子と一緒に盛られて出てくるなど、お祝いの席にも欠かせない料理です。プレーン味の他、紫芋や胡麻入り、ウコン味、黒糖風味と種類も豊富です。つくり立てはサクサクと弾力ある生地が美味しく、時間が経つにつれ固くなってきますので、家で揚げたてをつくりぜひ食べていただきたいと思います。

 今回のレシピは公益社団法人沖縄県栄養士会の「うちなー料理レシピ サーターアンダギー」を参考にしました。

砂糖量を調整して自分好みの味に

 沖縄に行かなくても、ここ数年は東京のスーパーやデパートでいろんな味のサーターアンダギーが売られています。関東でも人気商品らしいのですが、私としてはやっぱり沖縄で食べたくなるお菓子なのでこちらで買ったことはありません。

 今回、サーターアンダギーつくりに初挑戦し、レシピを見てその砂糖量の多さに驚きました。日本ではなく海外のお菓子並といった印象で、そんなところにも異国の雰囲気を感じました。美味しくつくるコツは、薄力粉とベーキングパウダーをふるいにかけること。目の細かい滑らかな生地ができます。そして卵を泡立て過ぎないように勢いよく砂糖と混ぜることです。揚げた時に中に気泡ができないようにするためだと思います。

 生地をまとめていったん冷蔵庫で休ませてから油で揚げます。表面がパックリと割れるまでじっくりと揚げることも必須です。ご紹介したレシピでは砂糖量が多めだと感じた方は砂糖量を半分くらいにして、揚げてからお好みで上から砂糖を振るといいでしょう。実際に私はそうしたのですが十分に甘いサーターアンダギーが完成しました。

〈2019. 06. 07.〉

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