令和新時代 災害食も新ステージへ
生活の強靭化に向けて”明るい備蓄”
大規模災害への備えは生活の強靭化から……
食品ストックのマネジメントが鍵!
【「平成」は”どんな時代”?――災害史を刻む大災害が起こった時代 】
- 『令和』に入って改めて大災害へのカウントダウンの警鐘が高鳴る
- 『令和』の備えへの手始めに、「災害に備える食品ストック」
平成時代、わが国は阪神・淡路大震災、東日本大震災という2つの突出した大規模災害に打ちのめされ、それからも枚挙にいとまがないほどの大きな災害を次つぎと経験した。
平成から令和へ――時代(?)の変わり目で、平成は戦争がなかったからいい時代だったと街頭インタビューに答える人がいた。たしかにわが国が巻き込まれる戦争はなく平和だったのだろう。しかしいっぽうで、わずか30年の間に、わが国の災害史に永く銘記される過酷な災害に2度も襲われて信じがたいほどの死者数を記録し、いまなお避難生活を続ける多くの被災者を擁している。その事実を、すでに風化したとは言えないだろう。しかも、南海トラフ巨大地震や首都直下地震をはじめ、大雨・台風、大規模噴火など、『令和』に入って改めてカウントダウンの警鐘が高鳴る想定災害も少なくない。
そこで防災メディアとしては、令和元年号となる2019年5月最初の特別記事は、「令和の備え」としたい。そのテーマは「生活の強靭化――災害に備える食品ストック」である。
- 「あって良かった!食料の家庭備蓄懇談会」 啓発ガイド2種
農林水産省は去る3月7日、各家庭で食料の備蓄に無理なく取り組むための啓発ガイド「災害時に備えた食品ストックガイド」と「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」(いずれも冊子)を制作して公表、また、「家庭備蓄ポータル」を立ち上げた。
これは同省が立ち上げた「あって良かった!食料の家庭備蓄懇談会」(2018年12月~2019年2月、全4回開催)の検討成果をとりまとめたもので、近年、全国各地で大規模な災害が頻発し、地域の食料供給が途絶えるケースも発生しているなかで、食料の家庭備蓄のいっそうの定着に向けて効果的な手法を検討した。
![レジリエントな食品ストック P2 1 「災害時に備えた食品ストックガイド」の表紙(右:要配慮者向け) - レジリエントな食品ストック](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2019/05/P2-1_%E3%80%8C%E7%81%BD%E5%AE%B3%E6%99%82%E3%81%AB%E5%82%99%E3%81%88%E3%81%9F%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%80%8D%E3%81%AE%E8%A1%A8%E7%B4%99%EF%BC%88%E5%8F%B3%EF%BC%9A%E8%A6%81%E9%85%8D%E6%85%AE%E8%80%85%E5%90%91%E3%81%91%EF%BC%89.jpg)
▼「災害時に備えた食品ストックガイド」
家庭での備蓄に適した食品の選び方、ローリングストック法等による日頃の活用方法、効率的な収納方法、災害時に役立つレシピなどの実践的な内容
▼「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」
避難所で配られる食事が食べられない可能性がある乳幼児や高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの人などの要配慮者に向けて、家庭備蓄を行う際に必要な情報や災害時における食事の注意点などを、栄養・医療の専門家の監修のもとでとりまとめ
▼家庭備蓄ポータル
食品の家庭備蓄に無理なく取り組むためのガイドや、乳幼児、高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの人などに向けて、家庭備蓄を行う際に必要な情報を公開。今後も随時コンテンツを追加していく予定
![レジリエントな食品ストック P2 2 「備蓄食品の収納テクニック」より 1 - レジリエントな食品ストック](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2019/05/P2-2_%E3%80%8C%E5%82%99%E8%93%84%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%81%AE%E5%8F%8E%E7%B4%8D%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%8D%E3%82%88%E3%82%8A-1.jpg)
ポイントとして、とくに要配慮者向けが作成され、乳幼児、アレルギー患者、高齢者、摂食嚥下障害者、慢性疾患患者などについて詳細に解説したこと、備える期間を地域や災害にもよるとしながら、2週間としたこと、そして、ローリングストックにより、賞味期間の短い加工食品や伝統的な乾燥野菜なども含めたことがあげられる。
備える期間を2週間とした背景には、広域大規模災害では被災地のみではなく、全国的に物流が止まり、飲料水や食料の入手が困難になることもあり得る。また、わが国には地域や家庭に伝わる乾物・干物・漬物・酢漬けなどの伝統的な保存食があり、その活用も勧められている。果物やドライフルーツなど、家庭に常備しそうな食品も活用できる。要は、各家庭でいろいろな“非常食” を工夫して、楽しく備蓄することが有効としている。
今後は継続した啓発プロモーションを計画し、備えることが新しい生活スタイル=生活の強靭化につながるように、継続できる取り組みが検討されている。
あって良かった!懇談会」の委員を務めた別府 茂氏(日本災害食学会理事・副会長)は、治療食・介護食などの開発・生産・販売を主な事業とするホリカフーズ株式会社に在職中に2004年新潟県中越地震に遭遇し、被災者・救援者そして地域社会の企業人として被災地の復旧・復興に尽力した。その後、災害食研究者として日本災害食学会創設(2013年9月1日)に尽力し、現在は新潟大学大学院の非常勤講師、防災士として日本防災士会参与を務めるかたわら、災害栄養学、備蓄のあり方、備えへの意識のあり方などの幅広い見地から「健康二次災害の防止」、「災害時の食のあり方」を追究、啓発活動にも力を入れている。
別府氏は「食品ストックガイド」について、「令和時代にも想定される大規模災害への対策は喫緊の課題。国土強靭化だけでなく、生活の強靭化も図る必要性を感じている」としている。本紙特別記事はその言葉に触発されたものである。
>>農林水産省:災害時に備えた食品ストックガイド(平成31年3月)>>日本災害食学会
< 2019. 05. 02. >