関西大学北陽高等学校の生徒チームが
探究授業「企×学協働プロジェクト『刀』」の一環として作成
ソリッドソニックの課題――
「聴こえのハンデのない社会を実現するには?」に挑戦
《本紙特約リポーター:片岡 幸壱》

関西大学北陽高等学校(大阪府大阪市)の生徒4人が、聴覚障がい者向けの緊急時コミュニケーション支援カードの開発に取り組んだ。
この取組みは、2022年度から北陽高等学校と企業が協働して社会課題に挑戦する「企×学協働プロジェクト『刀』」の一環で、音響機器や音響システムの研究開発等を行うソリッドソニック株式会社(兵庫県神戸市)から与えられた課題「聴こえのハンデのない社会を実現するには?」がテーマ。生徒たちが企業が直面するリアルな課題に取り組みながら、社会で求められる思考力・判断力・表現力を育むことを目的に、授業の一環として行われる探究授業での活動だ。
北陽高等学校4人の生徒たちが同活動成果として開発したのは、災害時に聴覚障害のある人たちに使ってもらうための「SOSカード」。災害時には周囲の音、人の声、拡声器の誘導の声などが聞こえないと、被災リスクはより高くなる。東日本大震災では、障害者の死亡率は全体と比べておよそ2倍で、聴覚や視覚に障害がある人の割合が高かった。また、聴覚障害者団体の調査では、周囲との意思疎通に不安を感じることから避難をためらうケースが少なくないという。
SOSカードは、そうした聴覚障害者に使ってもらうことで、命を守ってほしいと開発された。

■ヒアリング、意見を重ねながら作成して発表・配布
本稿リポーター・片岡幸壱は、聴覚障がいの当事者として、また阪神・淡路大震災での被災経験を有する「防災士」として、生徒4人のアドバイザーとしてヒアリングを実施し、カードの内容・盛り込む情報などについてアドバイスを行った。


「SOSカード」は持ち運びやすいサイズで、横にはリングを通せる穴を設け緊急時に素早く取り出せたり不要なカードは抜き取ることもできる。カードは18枚で構成されており避難時・避難後・日常の3つの場面に分けられている。
○避難時:「助けて!!」、「逃げて!!」、「人が倒れている!!」、「あの建物が危ない!!」、「避難所はどこ?」、「どこに向かっているの?」のカード。
○避難後:「なんで並んでる?」、「避難所の受付はどこですか?」、「何がありましたか?」、「充電器はありますか?」など。
○日常(平時):「交番はどこ?」、「病院はどこ?」、「コンビニはどこ?」、「トイレはどこ?」、「代わりに話して」、「筆談できますか?」、「マスクを外して」(口元の発語の動きを見られる)、「呼ばれたら教えてください」(受付などで)、「耳が聴こえません」、「ゆっくり話して」などのフレーズと図像。
ちなみに、フレーズと図像が描かれたカードに加えて、筆談のための白紙カード(自分のニーズに応じたイラストや言葉を自由に書けるカード)が3枚差し込まれていて、これは片岡のアドバイスを取り入れたものだ。。
カードデザインは日本コンピュータ専門学校(大阪府大阪市)が担当し、国籍や年齢を問わず誰もが瞬時に理解できるようにピクトグラムを参考に制作。文字はユニバーサルフォントを採用し、より多くの人にとって見やすいデザインにした。
この取組みは、「関大防災DAY」で啓発ブース出展、「2025年大阪・関西万博」、「OSAKA JAPAN SDGs Forum」などで発表され、NEWS関西「ほっと関西」とNHK「列島ニュース」で放送された。さらに「2025年日本国際博覧会協会賞」を受賞し、「東京2025デフリンピック デフバスケットボール」男子日本代表選手と交流を行ったほか、大阪市東淀川区役所で配布された。
■聴覚障がい者が常に持ち歩く「SOSカード」に
開発・作成に関わった関西大学北陽高等学校の4生徒からは、「1年生から始めた活動だったが、社会で活用可能なカードの作成ができて、とてもうれしい。聴覚障がいを持つ多くの方にとって少しでも役立てればいいなと思います」との感想が聞かれた。
ヒアリングに協力した本紙・片岡は、本リポートを次のように締めくくる――「高校生が時間をかけて苦労しながら完成させたSOSカードは、聴覚障がい者である私自身も常に持ち歩きたくなるすばらしいカード。4人の今後のさらなる成長を期待し、また『誰一人取り残されない社会』の実現に向けて、SOSカードがどんどん普及してほしい」。
※掲載写真については主催者の掲載承諾を得ています(片岡幸壱、編集部)。
※「SOSカード」やグループ活動についての問い合わせは――
関西大学北陽高等学校 お問い合わせフォーム
※「SOSカード」普及支援について
関西大学北陽高校ではより多くの方に「SOSカード」を届けるため、作成・配布活動を続けていて、この活動は社会からの支援によっても支えられている。支援について詳細は――
関西大学北陽高校『企×学協働プロジェクト「刀」』社会実装支援募金
▽本紙特約リポーター:片岡 幸壱
神戸市在住。中学2年のとき阪神・淡路大震災に遭遇、自宅は全壊したが家族は全員無事避難。学生時代より取り組んでいる防災を仕事と両立しながら、ライフワークとして、ユニバーサルデザイン(UD)などのイベント・ボランティア参加を続けている。聴覚障がいを持つ防災士としても活躍中。
▼参考リンク:
・関西大学北陽高等学校
・企×学協働プロジェクト「刀」-関大防災DAY(11/15)
・企×学協働プロジェクト「刀」- SOSカード × NHK取材
・企×学協働プロジェクト「刀」-「SOSカード」日本国際博覧会協会賞を受賞
・企×学協働プロジェクト 「刀」- 東京2025デフリンピック
・6月8日(日)本校生徒が大阪・関西万博で探究発表を行います!
・9/8 テレビ放送 企×学協働プロジェクト「刀」-SOSカード
・企×学協働プロジェクト「刀」- OSAKA JAPAN SDGs Forum
・高校生が開発!聴覚障害者のための「SOSカード」ができるまで
・企×学協働プロジェクト 「刀」- 株式会社マテックスHPで紹介されました。

