共生=文化・言語の相互理解
防災英語の学び&Vice-versa
Vice-versa=逆も然り。防災で外国人と共生を図る鍵、「相互理解」
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外国人とのコミュニケーションを 頑固に拒否する日本人?
日本人が英語(コミュニケーション力)に弱いのがその理由?
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最近、日本で「外国人問題=共生社会」が社会的な関心事になっている。一般的には「外国人が日本で暮らすなら日本語を話すのが当然」と思われるが、逆に「日本には日本語を話す人しかいない」という現実を、”それってどうなの?”と疑問を呈する向きもあるという。というのも、スイスのある語学学校が発表した「英語能力指数2025」で、日本人の英語力は非英語圏の123カ国・地域の中で96位だった、しかも、前年より4つ順位を下げ、アジア諸国のなかでも下位グループで、韓国・中国・ベトナムよりも下位だった。
国は(労働力としての)外国人を受け入れる要件として、日本語教育を受けることを必須とするようだが、それはいいとして、「相互理解」の前提としては、受け入れ側の日本人の外国語・外国文化の理解力(国際的な共通言語としては英語力)も問うべきではないのか――つまり、かたくなに(?)外国人の日本語習得、日本文化(マナー? その定義は?)の理解・受け入れに固執する今日の”原日本人”・”原日本国”は、共生云々以前に、外国人(多様な言語・文化圏)とのコミュニケーションに未熟、ないし拒否しているようにも思えなくもない(日本はかつては異文化受け入れの”手だれ”であったはず)。
そこで、目に止まったのが、株式会社アライブの小学生向け英語防災イベント情報だ。「子どもたちに防災教育を英語で」の象徴性に共感した。これまで学ぶ目的意識がなかったとも思える(だから身につかない)英語教育の”ワン・イシュー”(One Issue=論点の絞り込み)の象徴事例とも言え、まさに本紙が外国人受け入れに期待する「防災共生」の萌芽、魁(さきがけ)とも考えられるのだ。
アライブ:地震・台風・火山を英語で探究!防災STEMをテーマにした小学生向け春休み英語イベント開催
少子高齢化は日本が“経済成長”を至上命題とする限り向き合わなければならない厳しい逆境であり、人口減少・高齢化が続く限り、そして“身の丈の経済成長に甘んじない限り”(甘んじざるを得なくなってきてはいるが)、労働力としての外国人受け入れは避けられない。日本の外国人の人口比は2025年時点で約3%。地域によっては6人に1人の比率にもなっているという。“日本人”がまちなかで、外国人と見受ける人の多さを意識し始める水準に達しているという(同時に高齢者の多さも……)。
そこで、「外国人との共生」は、受け入れるにしても“規制”(排除ではない)するにしても、課題を直視し、社会の隣人としてのよりよい共生の道を探るべきだろう。そこで重要なキーワードとして「防災共生」が浮上する。
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「知らなかった」をなくすために 「やさしい日本語」と母語、英語で
外国人―災害時に「支援される人」から、「助け合える」関係へ
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先に報告書を公表した(本紙既報)国の首都直下地震対策検討ワーキンググループの議事録の経緯・経過を散見して注目されるのは、前回の想定時から変貌しつつある「都市構造の変化」への言及だ。
人口の東京一極集中、湾岸地区などで相次ぐタワーマンションの建設、そして急増し、かつオーバーツーリズムとして定着しつつある訪日外国人に対する多言語での防災情報発信、さらにはわが国の高齢化・少子化を背景とする“労働人口確保政策”として拡大する在留外国人との“防災共生”などの課題・テーマに言及した。
内閣府(防災担当):首都直下地震対策検討ワーキンググループ(2023年〜)
「防災共生」――言語や文化の違いから、避難情報が届かない、避難所で孤立する、地域の訓練に参加しづらいといった問題は根強い。こうした状況を変えようと、自治体や市民団体が地域防災活動の一環として、外国人コミュニティと協働し、互いに支え合う「防災共生」の取り組みが広がりつつある。この動きは当然、防災士をはじめ自主防災にとっても、地域防災の重要なテーマとなるはずだ。
防災は知識を伝えるだけではなく、互いの不安や価値観を共有、共に学ぶことで、災害時に助け合える関係が生まれる。公的機関の多言語解説サイト例には下記リンクがある。
内閣府(防災担当):外国人への災害情報の発信について(15言語対応の説明資料)
TSUNAHIRO(文科省):「生活者としての外国人」のための日本語学習サイト つながるひろがる にほんごでのくらし


■ 多言語化だけでは届かない現実

東京都大田区のある公民館では昨秋、地域の自主防災組織と在住外国人グループが合同で防災ワークショップを開いた。参加者は約40人。中国、ネパール、ベトナムなど多様な出身者が集まり、地震発生時の行動や避難所の仕組みを、「やさしい日本語」と母語を交えながら学んだ。「やさしい日本語」は本紙も幾度も取り上げている新しい日本語体系だ。
「避難所にペットを連れて行けるか知らなかった」「非常食の作り方を初めて知った」。参加した外国人からは、生活に直結する疑問が次々と上がった。地域住民側も「外国人が何に困るのか初めて理解できた」と語り、双方の距離が縮まる場となった。
いっぽう、自治体による多言語での防災情報発信には「情報があっても読まれない」「専門用語が難しい」などの壁があるという。背景には、外国人住民の生活環境の多様さがあり、長時間労働で地域活動に参加できない人、短期滞在で地域とのつながりが薄い人、日本での災害経験が乏しい人など、状況はさまざまだ。そのため、単に翻訳するだけでは不十分で、「地域の人が直接つながり、信頼関係を築くこと」が防災共生の鍵ともなる。
■ 「在留外国人防災士」など、コミュニティ防災リーダーの育成で橋渡しを

兵庫県神戸市では、外国人コミュニティの中から「防災リーダー」を育成する取組みが進む。市が主催する研修では、災害時の情報収集方法、避難所運営の基礎、通訳のポイントなどを学ぶ。
修了者は地域の防災訓練に参加し、同じ国籍の住民に母語で情報を伝える役割を担う。ベトナム出身のリーダーは、「日本語が苦手な仲間に、避難の流れを説明できるようになった。自分が地域の一員として役に立てるのが嬉しい」と語る。
市担当者は「行政だけでは届かない層に、コミュニティ内部の力で情報が広がる」と効果を強調する。
■ 避難所運営に多文化視点を 文化の違いを理由に排除しない
災害時、避難所での生活は長期化することも多い。食文化、宗教、生活習慣の違いがストレスとなり、外国人が孤立するケースも。長野県では、避難所運営マニュアルに「多文化配慮」の章を新設した。
ハラール対応食品の確保、宗教的理由で男女別空間を必要とする人への配慮、文化的背景を踏まえたコミュニケーション方法などを明記。避難所運営研修も行い、実践的な理解を深めている。
担当者は「災害時は誰もが不安を抱える。文化の違いを理由に排除されることがないよう平時から準備することが重要」と話す。

■ SNSとデジタルがつなぐ新しい防災
若い外国人住民の多くはSNSを主要な情報源としている。これを活かし、地域の防災情報を多言語で発信する「コミュニティSNS防災ネットワーク」も全国で広がっている。
福岡市では、地域の留学生団体が中心となり、災害時に必要な情報を英語・中国語・韓国語で発信する仕組みを構築。平時から生活情報を共有し合うことで、災害時にも自然に連携が取れるようになった。
■ 「共に生きる防災」へ “排斥”は人口減少・高齢化が進むわが国の国益を損じる
「防災共生」の取組みは、単なる災害対策にとどまらない。地域の外国人住民が「共に地域を支える仲間」として関わることで、地域全体のつながりが強まる。日本防災士機構が推進する防災士制度のキャッチフレーズは、「助けられる人から助ける人へ」だが、まさに地域の在留外国人も「支援される人から、地域を支援する人、助け合える人へ」の変容を期待できる可能性がある。人口減少・少子化・高齢化が進む日本社会において、外国人住民は地域の重要な働き手であると同時に、地域の活性化、安全・安心の担い手となり得るならば、まさに“排斥”はわが国にとって国益を損じることになるだろう。
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次世代・次次世代の“脱・原日本人” 異文化の相互理解・交流に期待
排外主義に 関東大震災での流言被害に通じる潜在リスクを憂うる
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「防災共生」はその意味でも、災害に強いまちづくりだけでなく、多様性を受け入れる社会づくりにもつながる。そして、「多文化共生」と「防災」は本来切り離せない。災害時に助け合える地域は、平時から互いを理解し合う地域であるはずだ。そのためにも地域の一人ひとりが、隣りに住む外国人とつながり、理解し合い、共に災害に備える――その積み重ねこそが、次の災害から地域を、そして互いの命を守る力となる。

福岡アジア都市研究所:災害時に有効な外国人支援に向けた一考察
ちなみに、私たち“日本人”はこれまで十分な英語教育を受けてきたはずだが、冒頭述べたように、英語でのコミュニケーション力は残念ながら諸外国と比べて劣るようだ。したがってアライブ「防災英語STEM教育」のように、次世代、次次世代に向けての英語による情報発信力の浸透・成果を期待する。次世代・次次世代が、もっと開かれたかたちで「共に地域を支える仲間」として外国人との相互理解・交流が進むことに期待したい。
最後に、“排外主義”の極論(あるいは“流言”)に、関東大震災での朝鮮人虐殺に通じる危険な徴候・潜在リスクを憂うる。その“実行犯”は主に当時災害下の不安な状況でにわかに組織された“自警団”であったとされる。今日の“自主防災”とは似て非なるグループだろうが、流言は「危険な飛来物」だ。関東大震災の流言被害はいま、SNSにより、より現代的な意味を持ち始めている。
災害時の“フェイクニュース、ニセ情報・画像、誤情報”などの真偽を見極める努力が、行政はもとより、自主防災、そして私たち一人ひとりに求められているのだろう。
〈2026. 02. 15. by Bosai Plus〉


