避難先の多様化――“モビリティ宿泊施設”の展開にも注目
内閣府(防災担当)は、大規模災害時にホテルや旅館が避難所として活用されるよう自治体向けのガイドラインを策定、昨年末に公表した。災害関連死防止につなげる狙いで、都道府県などが中心となって宿泊施設と避難所としての利用に関する事前協議を行い、協定を締結するなど、災害時の多様な避難ニーズに対応する。特に高齢者や障がい者、乳幼児を抱える家庭など、配慮が必要な人にとってより安全で快適な避難環境の提供など、宿泊施設確保や避難者とのマッチングに取り組むこととしている。
内閣府(防災担当):災害時 ホテル・旅館等を避難所として活用する際のガイドライン

内容は大きく「平時の取組み」と「発災時の取組み」の2部構成となっており、それぞれの段階で必要な準備と対応が詳細に記されている。
【 平時の取組み】
平時の取組みとしては、自治体内での担当部署の明確化と宿泊施設との事前協議が重要。避難所としての活用を想定した協定の締結(協定書の雛形も紹介)や受入れ可能な施設のリストアップ、避難対象者の把握といった準備が求められる。また、宿泊施設側にとっても、災害時の受入体制や安全確保のためのマニュアル整備が必要となる。
【 発災時の取組み 】
発災時には、避難対象者と宿泊施設との迅速なマッチングが鍵。自治体は事前に把握した避難希望者の情報をもとに受入れ可能な施設と調整を行い、スムーズな移送を図る。移動手段の確保や受入れ後の生活支援体制整備が重要で関係機関との連携が不可欠。
いっぽうで、宿泊施設側の受入れ意欲や、災害時の営業継続性、費用負担のあり方など、調整すべき点は多岐にわたる。また、避難者のプライバシー確保や、感染症対策など、現代的な課題にも対応する必要がある。それでもガイドラインは「多様な避難の選択肢を確保することが災害時の命と生活を守る鍵になる」と強調。避難所の過密や衛生環境の悪化が問題視されるなかで、ホテル・旅館等の活用が注目・期待されているのは確かだ。
●「分散避難」の多様化――ホテル・旅館等に“モビリティ宿泊施設”が参画
近年まで避難勧告・指示が出たときは、まず指定避難所へ避難、だった。その後、垂直避難が選択肢に入り、自分がいる場所が安全であれば在宅避難で、という流れになった。
さらに新型コロナウイルス感染症の蔓延下での避難で、ホテルや親戚・知人宅、安全な自宅、そして車避難などに分散して避難する「分散避難」が実施された。そしてこのところ、“モビリティ”(移動性)の機動力を活かした避難所も登場してきている。
▼「レスキューホテル」
株式会社デベロップは、コンテナホテルの移動性やフレキシビリティを活かし、平時にはホテルとして運営される客室を、災害など有事の際に被災地などにすみやかに移設する「レスキューホテル」として開発・提供している。
「レスキューホテル」には、車輪のついたシャーシ上にコンテナを配置したまま運営される「車両型」と、コンテナをシャーシから下ろし、地面に固定して運営される「建築型」がある。デベロップ社によれば2026年1月現在、123拠点、4704客室を擁し、災害協定を184件締結しているという。

▼「防災・家バンク」
日本ムービングハウス協会が展開する「防災・家バンク」は、ムービングハウスを用いた応急仮設住宅の普及と社会的備蓄をめざす官民連携の取組み。トレーラーハウスやコンテナハウスとは異にしつつ(国際規格の海上輸送コンテナと形状・サイズは同じに設計)、「完成した一般住宅を応急仮設住宅として利用」というアプローチの応急仮設住宅で、その形状からは移動式木造住宅だ。
生産拠点や備蓄場所の地産地消を進めて災害時リスクを分散、官民協働により当面、全国で約200カ所・1万棟の備蓄をめざしている。

〈2026. 02. 05. by Bosai Plus〉
