P4 2 本所石原方面大旋風之真景(帝都大震災画報より) 640x350 - 大地震被害想定の死角―<br>メタンガス(火焔)リスクとは

公開シンポジウム
「首都直下型地震におけるメタンガスリスク対策」が
課題提起する

● 災害対策の“死角”――関東大震災の火災旋風は「メタン火焔」による激甚火災?

 一般社団法人減災サステナブル技術協会が、災害・防災関連5団体の連携で、首都直下型地震時に懸念される二次災害、とりわけメタンガス由来の火災リスクとその低減策をテーマに、公開シンポジウム「首都直下型地震におけるメタンガスリスク対策」を10月5日、東京ビッグサイト会議棟で開催する。
 最新の研究知見と実務者の視点を交え、都市防災・BCP(事業継続)に資する具体策を議論する。

P4 1 メタンジオハザードシンポジウム2025「首都直下型地震におけるメタンガスリスク対策」 - 大地震被害想定の死角―<br>メタンガス(火焔)リスクとは
メタンジオハザードシンポジウム2025「首都直下型地震におけるメタンガスリスク対策」

 「メタンガス由来の火災リスク」?――これまであまり耳慣れなかったテーマだが、実はこのハザード、災害対策の“死角”とも言えそうなのだ。首都圏で大規模地震が発生した場合、建物倒壊だけでなく、地中ガスの挙動やライフライン被害が引き金となる火災の多発・延焼も、重大な課題となり得るのだという。
 都市の高密度化が進むなかで、初動対応・避難判断・情報伝達・インフラ側の安全対策を多角的に検討・共有する場が求められているのだ。

 同シンポジウムでは、最新研究の紹介に加え、自治体・インフラ事業・企業の危機管理担当者が実務レベルで活用可能なヒントを提示しようというもの。

減災サステナブル技術協会:メタンジオハザードシンポジウム2025

 日本列島および取り囲む近海には、水溶性メタンガス田やメタンハイドレート賦存域(ふぞんいき=潜在的な資源存在域)が拡がっていて、そこで発生する大地震の巨大エネルギーはメタンやメタンハイドレートを活性化し、ガス田火災や津波火災を引き起こす可能性があるという。

 実際、歴史地震史料から、例えば1923年関東大震災(大正関東地震)で起きた被服廠跡で発生した火焔は“火災旋風”とされてきたが、南関東ガス田由来のメタン火焔噴出による激甚火災だったという資料や証言がある。
 また、1855年安政江戸地震では夜中に大地の割れ目から火が噴き出る様子が目撃され、このとき起きた同時多発火災の発生域は大正関東地震のそれと重なるという。

P4 2 本所石原方面大旋風之真景(帝都大震災画報より) - 大地震被害想定の死角―<br>メタンガス(火焔)リスクとは
関東大震災「本所石原方面大旋風之真景(帝都大震災画報より)」
P4 3 本所区吾妻橋。電車路(レール)が1000度を超える火焔で曲がっとみられる(消防博物館資料より) - 大地震被害想定の死角―<br>メタンガス(火焔)リスクとは
関東大震災「本所区吾妻橋。電車路(レール)が1000度を超える火焔で曲がったみられる(消防博物館資料より)」

 それら火災発生域の地下の比較的浅いところに、シルト層(粘性土)がキャップロック(水やガスを通さない岩石状の地層=帽岩とも)となるメタン溜が存在し、このメタンが、地割れでできた地盤との電気相互作用で帯電・静電気着火して地表に火焔となって噴き出したと考えられるのだという。

 大地震時のメタンガス由来の火災の発生例としてはほかに、1828年越後三条地震や1847年善光寺地震、近くは1993年北海道南西沖で起きた津波火災、東日本大震災で起きた津波火災(その24%は原因不明)など、メタンガス由来の火災である可能性があるという。
 大地震で起こり得る“ジオハザード”としての火災リスク、想定外ではすまされない。

Confit:大地震が誘発するメタン火災害の懸念

〈2025. 10. 02. by Bosai Plus

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