P1a 復興庁による出前授業 - 次世代防災 担い手への期待<br>「復興庁出前授業」

次世代防災の潜在戦力の顕在化
中高生防災教育に大きな可能性

全国の中学校・高校で「福島の復興」をテーマに
復興庁職員による出前授業を13県14校で実施

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出前授業の趣旨は 「福島の復興を考える」
復興庁職員がより多くの中高生と直接対話「理解を深めてもらう」
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P2 1 復興庁出前授業 25年度 開催スケジュール - 次世代防災 担い手への期待<br>「復興庁出前授業」
復興庁出前授業 2025年度 開催スケジュール

 復興庁は2022年度から、全国各地の中学・高等学校へ復興庁職員を派遣する出前授業を行っている。本年度も出前授業の実施を決定、昨年度の8県8校から13県14校に拡大し、9月から順次、来年3月まで実施予定だ。開催地域は、昨年実施した北海道に加え、秋田県・千葉県・東京都・福井県・山梨県(2校)・長野県・三重県・大阪府・岡山県・徳島県・香川県・熊本県の中学・高校。復興庁の職員が生徒たちと直接対話しながら座学とグループワークを行い、福島の復興を考える。

P1b 出前授業の様子(イメージ) - 次世代防災 担い手への期待<br>「復興庁出前授業」
出前授業の様子(復興庁資料より)

 出前授業の内容は、①復興庁職員による講義:東日本大震災の概要、復興の現状、残された復興の課題、復興の伝承等、②生徒同士でのグループワーク・発表、としている。
 ――“福島の復興”をテーマに、「福島の復興はどれくらい進んでいるか」、「震災を風化させないためにはどうすべきか?」、「どうしたら風評の影響を払拭できるか?」、「大災害に対して、自分たちはどう行動すべきか」、「放射線の基礎知識や健康影響など正しく知ってもらうにはどのような取組みが必要か」など、復興の取組みについて復興庁職員がより多くの中高生と直接対話しながら理解を深めてもらう趣旨だ。

 近年、中高生の発達段階や地域特性を踏まえて、防災教育をより実践的に展開しようという動きが国、自治体で目立つようになってきた。中高生の防災教育の基本は「自助」であり、自らの命、家族や大切な人の安全を守ることに始まるが、学習効果面で社会科・理科・家庭科など教科横断的な教育の展開ができ、総合学習や探究活動と組み合わせて生徒の主体的な学びへとつなげられる。さらには、学校・地域・関係機関が協働することで、防災意識と地域防災力の向上が期待されるのだ。

P1c 出前授業でのグループワーク(イメージ) - 次世代防災 担い手への期待<br>「復興庁出前授業」
出前授業でのグループワークの様子(復興庁資料より)

 言うまでもなく、人口減少、少子高齢化で地域防災・自主防災の承継が大きな課題となった今日、中高生の防災意識の高まりで、彼らが避難所運営や地域防災会議に参加する事例も見られるようになってきた。復興庁の出前授業はもちろん、東日本大震災という未曾有の大災害の教訓、つまりは福島復興という自然災害に通底する教訓を総合的に学ぶものとして、次世代防災の担い手の養成に通じることは明らかだろう。

復興庁出前授業:全国の中学校・高校にて「福島の復興」をテーマに復興庁職員による出前授業を実施

復興庁:出前授業

P1d 福井県あわら市芦原中学校での出前授業(2024年10月8日) 1 - 次世代防災 担い手への期待<br>「復興庁出前授業」
福井県あわら市芦原中学校での出前授業(2024年10月8日)
P2 2 復興庁出前授業 副読本『福島の復興と再生の歩みを学ぶ』(表紙より) - 次世代防災 担い手への期待<br>「復興庁出前授業」
副読本『福島の復興と再生の歩みを学ぶ』

 復興庁では出前授業の副読本として『福島の復興と再生の歩みを学ぶ』も用意している。地震・津波被害に加え、東京電力福島第一原発事故という世界でも類を見ない複合災害を経験した福島県はいまだ復興・再生の道半ばにあるが、避難指示区域は順次解除が進み、いまだ残る帰還困難地域においても特定復興再生拠点区域(一部の避難指示を解除し、居住を可能とすることをめざす区域)が定められている。
 現在は復興(災害)公営住宅が整備されるなど住民の帰還に向けた動きが加速している現況や、震災伝承施設や現地でがんばる人びとを紹介、観光スポットや特産品情報も盛り込んでいる。

出前授業:副読本『福島の復興と再生の歩みを学ぶ』

P2 3 復興庁出前授業の一環として高校生ツアーも実施 - 次世代防災 担い手への期待<br>「復興庁出前授業」
復興庁出前授業の一環としてこれまでは高校生ツアーも実施した

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中高生の防災の学びは、幅広く伝播する
自治体による「中高生防災士養成」の顕在化と加速度的浸透
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 復興庁の中高生向け出前授業の中心テーマは「福島の復興」だが、災害復興の学びを通じて次なる災害に備える「防災」が通底するテーマでもある。その意味で、中高生の防災教育に関連して近年注目されるのは、自治体等における「中高生防災士」養成への機運が高まっていることだ。

 防災士資格は日本防災士機構が認証する民間資格だが、住民の防災士資格取得費用を公費(税金)を投じて補助する自治体が増えている。防災士が社会的信認を得たことを背景に、防災士資格取得者は、2003年の防災士制度発足以来20余年で累計で30万人を超え、いまや地域防災を支える“新しい公共”として期待されている。

 自治体は住民の防災士養成からさらに一歩踏み込んで、「中高生防災士」の養成に乗り出していて、その事例は本紙が把握しているだけで、茨城県(社会福祉協議会)、埼玉県川口市、戸田市、東京都教育委員会(高校生防災士)、東京都荒川区、江戸川区、岐阜県輪之内町、徳島県(教育委員会)などがあり、今後さらに加速度的に増えそうだ。

 というのも、「中高生の防災の学びは幅広く“伝播”する」という効果が期待できるからだ。防災士はそのモットーとして「助けられる人から助ける人へ」があるが、防災士を取得した中学生が、災害時の適切な防災行動によって人的被害を最小限に抑えられ、彼らが守られる側から守る側になることに通じる。
 そして、地域の防災訓練へ積極的に参加するようになると、人口減少・少子高齢化のなかで弱体化しつつある自主防災や、地域・コミュニティでの防災訓練がより活性化することは明らかだろう。

 東京都区部で中高生防災士を養成する理由のひとつに、昼間人口における防災力の補完もあげられている(成人は地区外で勤務中だが、中高生は地区内で指定避難場所でもある中高校にいるケースが多いと想定される)。
 要は、次世代防災の強化に向けた潜在防災戦力としての中高生が“顕在化”しているのだ。

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『るるぶ特別編集東日本大震災伝承施設ガイド』改訂二版 発行
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P2 4 『るるぶ特別編集東日本大震災伝承施設ガイド』改訂二版 - 次世代防災 担い手への期待<br>「復興庁出前授業」

 復興庁では、震災伝承活動に関する全国的な広報展開の一助となるよう伝承施設を紹介した『るるぶ特別編集 東日本大震災伝承施設ガイド』を制作、本年3月10日に改訂二版を発行した。改訂二版『東日本大震災伝承施設ガイド』は下記リンクからダウンロード可。

復興庁 復興知見班:『るるぶ特別編集東日本大震災伝承施設ガイド』改訂二版

〈2025. 10. 03. by Bosai Plus

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