P2 1 国土交通省XRAINのデータを用いて解析された2025年9月5日12時~14時の降雨強度と積算雨量の分布(動画) 640x350 - 静岡竜巻 風速約75m/s JEF3の突風

国内最大級の規模「JEF3」に該当と推定―気象庁

地球温暖化による極端気象? 陸上上陸で勢力を強めた台風15号
―竜巻は観測史上最大級!

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竜巻の強さ――鉄骨系店舗の外壁材の飛散等を根拠に
突風風速約75m/s、日本版改良藤田スケールで「JEF3」に該当
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 去る9月5日12時50分頃、静岡県牧之原市静波から榛原(はいばら)郡吉田町大幡にかけて発生した突風について、気象庁は9月8日、その種類は「竜巻」と認められるとし、その強さは風速約75m/sと推定、日本版改良藤田スケールで「JEF3」に該当すると発表した。
 また、12時30分頃の掛川市浜野から大坂にかけて発生した突風も竜巻の可能性が高く、その強さは風速約55m/sと推定、日本版改良藤田スケールで「JEF2」に該当するとした。
 牧之原市静波と吉田町大幡にかけての突風では、鉄骨系店舗の外壁材の飛散、電柱の折損などの被害があり、掛川市浜野から大坂にかけての突風では、大型自動車の横転などの被害があった。

P1 2025年9月5日に静岡県牧之原市から吉田町にかけて発生した突風(領域A/防災科学技術研究所資料より) - 静岡竜巻 風速約75m/s JEF3の突風
上図版は、2025年9月5日に静岡県牧之原市から吉田町にかけて発生した突風被害(領域A/防災科学技術研究所資料より)。突風発生時には活発な積乱雲が当該地区を通過していた。映像により竜巻の移動方向を推定すると、上図領域①と②の被害は異なる竜巻により引き起こされた可能性。突風被害例:商業施設の外壁飛散、住宅の屋根や外壁飛散、飛散物による建物損壊、電柱倒壊、農業ハウス倒壊、自動車横転、山林の樹木の捻じ切れなど(画像クリックで情報源にリンク)

 この突風は、9月4日に発生した台風15号によるもので、5日未明に高知県に上陸、昼前に和歌山県に再上陸したのち、中心気圧1002hPa、最大瞬間風速25m(最大風速18m)という台風としては“弱い勢力”で本州を東進し、紀伊半島に達した。
 ところが、紀伊半島を過ぎて房総半島に達するまでに、台風の勢力は維持されたままで、逆に中心気圧992hPa、最大瞬間風速35mに発達した。台風の中心の東側に活発な雨雲の帯が形成され、愛知県東部から静岡県へと進み、5日昼過ぎ頃から台風が静岡県を通過する際に雷雨を伴った激しい荒天となり、線状降水帯も発生して、「記録的短時間大雨情報」が多数発表されている。

P2 1 国土交通省XRAINのデータを用いて解析された2025年9月5日12時~14時の降雨強度と積算雨量の分布(動画) - 静岡竜巻 風速約75m/s JEF3の突風
国土交通省XRAINのデータを用いて解析された2025年9月5日12時〜14時の降雨強度と積算雨量の分布(動画)。突風発生時には、台風中心付近のレインバンド内の活発な積乱雲が当該地区を通過していた。(画像クリックで情報源へリンク)

 気象庁は9月4日23時10分に「台風第15号に関する情報 第20号」を発表、「西日本から東日本では、5日にかけて、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒してください。また、強風や高波、落雷、竜巻などの激しい突風に注意してください。発達した積乱雲の近づく兆しがある場合には、建物内に移動するなど、安全確保に努めてください」と呼びかけた――

 ちなみに、静岡県牧之原市、掛川市、吉田町で発生した突風についての気象庁機動調査班による現地調査報告では、突風をもたらした現象が竜巻と認められる根拠として、次のような事例をあげている。
・突風発生時に活発な積乱雲が付近を通過中であった。
・突風発生時に移動する渦を撮影した画像が得られた。
・確度が高い、移動する渦の目撃証言が得られた。
・被害や痕跡は帯状に分布していた。
・被害や痕跡から推測した風向は不規則であり、様々な方向がみられた。
・竜巻に特徴的なゴーという音が移動したという証言が複数得られた。
・突風はごく短時間(1分程度)であったという証言が複数得られた。
・耳の異常等体感の証言が複数得られた。
・建物壁面の高い部分への泥の付着がみられた。

 また、突風の強さの評定については、鉄骨系店舗の外壁材の飛散を根拠としてこの突風の強さは風速約75m/sと推定、日本版改良藤田スケールで「JEF3」に該当する、とした。

気象庁:静岡県牧之原市、掛川市及び吉田町の突風〜気象庁機動調査班による現地調査の報告〜

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国際的な指標になった藤田哲也博士の「Fスケール」を日本版に
「JEF3」の竜巻は わが国の観測史上 最大級
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 「日本版改良藤田スケール」とはなにか――わが国で竜巻等突風対策が本格化したのは、2006年9月に宮崎県延岡市(F2。「F」については後述)で発生した竜巻で死者3名、同年11月に北海道佐呂間町(F3)で死者9名を出し、2007年防災白書が「2006年は竜巻災害が印象づけられた」と特記したことに始まる。
 「Fスケール」(F Scale)は、竜巻による被害規模を表わす指標で、日本人気象学者・藤田哲也(1920-1998年)にちなむ。藤田は福岡県出身、東京大学で「台風研究」で学位取得、その後渡米。シカゴ大学で竜巻やダウンバースト現象を研究し、竜巻の規模の基準として1971年に「F(藤田)スケール」を考案、米国に定着させて国際的な指標となった。

P2 2 日本版改良藤田スケール(JEFスケール) - 静岡竜巻 風速約75m/s JEF3の突風
日本版改良藤田スケール(JEFスケール)

 「日本版改良藤田スケール」(JEFスケール。JEF:Japanese Enhanced Fujita scale)は、それまで評定に用いてきた「藤田スケール」を改良したもの。ちなみに「Fスケール」は、F0(ゼロ、風速17〜32m)から最大のF5(風速117〜142m)まで、風速と被害状況による区分で6段階となっている。日本の気象庁は2007年の予報用語見直し時に、初めてFスケールを予報用語として加えたが、「Fスケール」は米国における建築物(9種類)の被害を対象として作成されていて、日本での被害の評定には課題があった。

P2 4 竜巻の年別発生確認数(1961~2025/気象庁資料より) - 静岡竜巻 風速約75m/s JEF3の突風
竜巻の年別発生確認数(1961〜2025/気象庁資料より)

 気象庁は、2012年5月に茨城県常総市やつくば市で発生した竜巻をきっかけに「竜巻等突風の強さの評定に関する検討会」で竜巻等の突風の強さを客観的に評定するための検討を進め、日本の建築物等の被害に対応するよう改良した「日本版改良藤田スケール」及びその技術的指針である「日本版改良藤田スケールに関するガイドライン」を15年12月に策定、16年から24年にかけて気象庁の突風調査で得られた評定結果をもとに、同ガイドラインの見直しを実施。24年6月に「竜巻等突風の強さの評定に関する検討会(報告書)」をとりまとめた。

気象庁:「竜巻等突風の強さの評定に関する検討会(報告書)」の公表

P2 3 突風分布図(1961~2025/気象庁資料より) - 静岡竜巻 風速約75m/s JEF3の突風
突風分布図(1961〜2025/気象庁資料より)

 なお、「日本版改良藤田スケール」の「JEF3」に相当する竜巻は2012年の茨城県で被害をもたらした竜巻、2006年に北海道佐呂間町で起きた竜巻、2018年に沖縄県の伊江島で起きた竜巻など、1961年の統計開始以降、今回を含めて13例あるが、「JEF4」以上はなく、今回の竜巻は、国内で観測された竜巻のなかで最大級だったと推定されている。
 台風15号被害について、静岡県のまとめによると、死者1人(吉田町)、重傷8人、軽傷75人(9月13日午後2時現在)となっている。
 竜巻から身を守るには――気象庁の下記サイトを参考にしてほしい。

気象庁:竜巻から身を守るには

P2 5 竜巻から身を守るための行動(気象庁資料より) - 静岡竜巻 風速約75m/s JEF3の突風
気象庁HPより、「竜巻から身を守るには」(画像クリックで情報源へリンク)

〈2025. 09. 15. by Bosai Plus

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