image 共通編「「臨時情報発表時に防災対応をとるべき地域」(内閣府資料より) - 「南トラ 臨時情報」の改訂

「鉄道・催し 継続を」―“相対的に高まった後発大規模地震”への備え

「巨大地震注意」で
「活動規制求めず」 「自らの命は自らが守る」、「事前の備えの確認」を

●不確実だが、“相対的に高まった後発大規模地震”への備えは有意義

 内閣府は、南海トラフ地震発生のおそれが高まったときに発表される「南海トラフ地震臨時情報 防災対応ガイドライン」を改訂、8月7日に公表した。
 昨年8月8日の宮崎県沖を震源とする最大震度6弱の地震(M7.1)を受け、「巨大地震注意」が初めて出されたが、旧ガイドラインでは「巨大地震注意」に関する記述が少なく、イベントの開催や鉄道の運行をめぐって混乱も生じた。
 改訂されたガイドラインでは臨時情報の「巨大地震注意」について、自治体や企業がとるべき対応として鉄道運行規制は原則求めず、イベントなども「継続が望ましい」などと明記している。

P3 1 ガイドラインの構成(内閣府資料より) - 「南トラ 臨時情報」の改訂
ガイドラインの構成(内閣府資料より)
P3 2 共通編「臨時情報に対する基本的な考え方」(内閣府資料より) - 「南トラ 臨時情報」の改訂
共通編「臨時情報に対する基本的な考え方」

 南海トラフ沿いにおいてマグニチュード(M)8〜9クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は80%程度(地震本部、2025年1月1日現在)とされており、大規模地震発生の切迫性が指摘されている。
 いっぽう、歴史的にはその発生形態は多様で、1707年の南海トラフ沿いの大規模地震は東側・西側で同時に地震が発生、1854年には南海トラフの東側で安政東海地震が発生した約32時間後に南海トラフの西側で安政南海地震が発生した。
 直近では、1944年に南海トラフの東側で昭和東南海地震が発生した後、約2年後の1946年に南海トラフの西側で昭和南海地震が発生した。
 また、日本海溝周辺においては、2011年の東北地方太平洋沖地震の2日前に、M7クラスの地震が発生。このような事例に照らして、最初の大規模地震が発生した際、次に起きる可能性のある「後発地震」に備えることは十分有意義ではある。

 中央防災会議では、不確実ではあるものの、大規模地震発生の可能性が平常時と比べて“相対的に高まった”と評価された場合の防災対応について2018年12月にとりまとめを行い、異常な現象を観測した場合、その情報を広く国民に知らせて減災に活かしていくこと、そして国は、情報発表時の防災対応の基本的な考え方、検討すべき項目、検討手順、留意点等をガイドラインとして示すこととした。前者については2019年5月、気象庁が南海トラフ地震臨時情報の提供を開始、(旧)ガイドラインは、後者を受けて南海トラフ地震臨時情報発表時の防災対応について作成されたものだ。

 そして2024年8月8日、ガイドライン運用開始以降初めての南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表され、これについての社会の反応等を踏まえ、中央防災会議の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」における検証を経て、内閣府は同年12月、南海トラフ地震臨時情報発表時の防災対応がより円滑に行えるようにするための改善方策をとりまとめた。この改善方策は2025年7月の基本計画の変更にも盛り込まれ、今回のガイドライン改訂に至っている。

内閣府(防災担当):『南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン』の改訂

P3 3 共通編「「臨時情報発表時に防災対応をとるべき地域」(内閣府資料より) - 「南トラ 臨時情報」の改訂
「臨時情報発表時に防災対応をとるべき地域」
P3 4 共通編「「臨時情報が発表される現象について」(内閣府資料より) - 「南トラ 臨時情報」の改訂
「臨時情報が発表される現象について」
P3 5 共通編「「臨時情報発表時にとるべき防災対応(巨大地震注意)」(内閣府資料より) - 「南トラ 臨時情報」の改訂
「とるべき防災対応(巨大地震注意)」
P3 6 記載充実の例:臨時情報発表時にとるべき対応の記載を充実(内閣府資料より) - 「南トラ 臨時情報」の改訂
記載充実の例:臨時情報発表時にとるべき対応の記載を充実

● 「自らの命は自らが守る」、「事前の備え」を確認―臨時情報の受け止めの基本に

☆人びとの置かれている状況は様々だが、「自らの命は自らが守る」ことが基本
☆後発地震が直後に起こるかは不確実、「事前の備え」を確認するきっかけに
 この2行は、「ガイドライン改訂」の「はじめに」に明記された臨時情報の受け止めの心得で、改訂による新規記載の一例だ。各主体(住民、地方公共団体、事業者等)は、臨時情報が発表された際にとまどうことなく地域の実情に応じた防災対応をとるため、日頃から各地域で意見交換・情報交換を行いながら、「臨時情報が発表された時の対応は、あらかじめ決めておく」ことが極めて有効だとしている。

 それぞれの実情に応じた防災対応を各主体が判断することを前提に、例えば「鉄道事業者」は「原則、運行規制はしない(平常通り)」、「巨大地震の発生に備え、従業員一人ひとりに避難場所や避難経路、避難誘導手順の再確認を徹底する」。
 住民への具体的行動指針は、「日頃からの備え」と「特別な備え」の再確認が促されている。家具の固定、非常持出品の準備、避難経路の確認などが具体的に例示されている。

〈2025. 08. 15. by Bosai Plus

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