P4 2d 令和6年能登半島地震による被害「液状化、地割れ、土砂崩れ、建物被害など」(石川県HPより) - 令和6年能登半島地震 対策検証報告書

元日夕方発災 半島孤立・過疎高齢化・職員不足…

災害対応行政職員・家族も被災、年末年始で出勤困難者が多数
 次へ 改善策は?

● 発災から1週間の県職員出勤率が50%を下回った!

P4 2 写真で見る令和6年能登半島地震被害状況(石川県HPより) - 令和6年能登半島地震 対策検証報告書
写真で見る令和6年能登半島地震被害状況(石川県HPより)、上から「道路被害」、「火災被害」、「津波被害」、「液状化、地割れ、土砂崩れ、建物被害など」

 2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」は、最大震度7を観測し、石川県で死者623人(うち災害関連死395人、いずれの数値も総務省消防庁調べ、2025年8月5日時点/ほかに新潟、富山両県で死者11人)にのぼり、住家被害は16万5000棟以上という石川県政史上未曽有の大災害となった。

 過去に類を見ない規模の地震であったことに加えて、能登半島特有の地理的制約や、過疎地域であり高齢化率が高いという社会的制約、また、元日の夕方という時期的制約も重なり、救急救助活動、生活支援、ライフラインの復旧は困難を極めた。
 いっぽう、災害対応にあたる行政職員自身や家族も被災、また年末年始で帰省・旅行中だったため出勤困難者が多数にのぼり、緊急参集した一部職員に負担が集中、発生から1週間の出勤率が50%を下回る職員も多く、自治体の“公助”としての災害対応がむずかしかった――

 そこで石川県は、今後発生する可能性のある災害に備えて、能登半島地震発災から概ね3カ月の初動対応における教訓や課題等を抽出して防災体制の強化につなげるため、「令和6年能登半島地震対策検証委員会」(委員長:宮島昌克・金沢大学名誉教授)を2024年10月に設置した。同検証を、石川県のみならず、全国の自治体・防災関係者における防災対策の向上につなげるため、①『課題の積極的な洗い出し』、②『災害対応業務を体系化し、今後の災害対応へ活用』、③『県職員に限定せず、多様な関係者からの意見を反映』の3点を検証の基本方針とした。

● 「検証結果の7つのポイント」

 報告書は、地震発生後約3カ月間の対応業務を、県・市町職員をはじめ支援にあたった各種団体のアンケート調査、、県民からの意見募集、専門委員による分析を基に検証した。この過程で明らかにされた53の災害対応業務について課題や改善策を整理。
 そのうえで、初動対応に必要な4つの対応と、実施に不可欠な3つの対応に大別し、「7つのポイント」――①県組織の災害対応体制、②県の受援・応援体制、③1.5次・2次避難(広域避難)対応、④被災者支援、⑤災害広報・情報発信、⑥デジタル技術の活用、⑦県民の防災意識、自助・共助意識の醸成――として検証を総括した。

P4 1 石川県報告書 能登半島地震「検証結果の7つのポイント」より - 令和6年能登半島地震 対策検証報告書
石川県報告書 能登半島地震「検証結果の7つのポイント」より

 このうち「初動対応でのポイント」として、下記をあげている。

  1. 避難体制の調整:孤立集落対策。1.5次および2次避難の調整と支援
  2. 被災者支援:避難所の運営。物資供給や生活環境の整備
  3. 情報発信:被災者への必要情報の提供。SNSやデジタル技術の活用
  4. 広域調整の改善:各関係団体との情報共有。衛星通信やデジタルツールの導入  このうち、「孤立集落対策」として、
    ・ 孤立集落可能性調査の実施、孤立集落対策マニュアルの整備、孤立見込みを踏まえた対応方針等の整理、孤立が見込まれる集落における通信機材の配備、物資の備蓄など
     「1.5次・2次避難(広域避難)対策」として、
    ・ 広域避難調整マニュアルの整備、災害規模・被災状況に応じた2次避難の実施要件の整理、2次避難運営マニュアルの整備、2次避難の具体的オペレーション、災害規模・被害状況に応じた健康チェック等の実施場所の検討など
     「被災者支援対策」として、
    ・ 大規模災害時に被災者の生活支援等を被災市町が単独で行うことは困難、長期的なライフライン途絶による長期間の生活支援(食事、トイレ、入浴、洗濯等)を想定、被災者の生活支援の実績を持つ災害支援NPOなど民間支援団体との連携など  ちなみに、「⑦県民の防災意識、自助・共助意識の醸成」では、防災士会・防災士との連携が特筆されていることに注目したい。
P4 3 石川県報告書 能登半島地震「検証結果のポイント」より「県民の防災意識、自助・共助意識の醸成」 - 令和6年能登半島地震 対策検証報告書
石川県報告書 能登半島地震「検証結果のポイント」より「県民の防災意識、自助・共助意識の醸成」。下段に「防災士」について「防災士の位置づけの明確化、市町・県単位での防災士の連携促進、防災士会による相互応援派遣の検討」などの記述がある

石川県:令和6年能登半島地震対策検証報告書

〈2025. 08. 15. by Bosai Plus

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