国土交通省が「土砂・洪水氾濫」ハザードマップの全国整備へ
発生リスク全国で数千…
報道によれば(下記リンク)、国土交通省は、土砂と泥水が一体となって氾濫する「土砂・洪水氾濫」に対応したハザードマップを全国で整備する方針を固めたという。「昨年の能登半島豪雨でも発生するなど、気候変動の影響で近年頻発化しており、発生リスクの高い流域は全国で数千に上る可能性がある。同省は今年度から特に危険な流域を優先し、自治体と連携してハザードマップの整備を進める」――

読売新聞:「土砂・洪水氾濫」ハザードマップを全国整備へ…高リスク流域、数千か所の可能性
「土砂・洪水氾濫」とは、「土石流と洪水の合体」による災害を言う。近年、気候変動による短時間降水量の増加や森林の荒廃などを要因とする「土砂・洪水氾濫」が増加傾向にあり、専門家のあいだでは災害事象として当然のことながら砂防・防災研究もなされているが、一般的には“土石流・土砂災害”にくくられ、防災用語としてはいわば“新語”だ。
「土砂・洪水氾濫」は、豪雨に伴う土石流や斜面崩壊等により上流から流出した多量の土砂が、谷出口から下流の緩勾配区間に流れ落ちて堆積し、河床が上昇することで土砂と泥水の氾濫が発生する現象(左図)。これに流木を伴う場合には、流木が橋梁に捕捉されることで流路が塞がり、被害を拡大する可能性がある。冒頭引用した報道は、この「土砂・洪水氾濫」について国土交通省が全国的なハザードマップを整備しようというもの。



ちなみに自治体で「土砂・洪水氾濫」への警戒を呼びかけている事例に奈良県がある。奈良県ではホームページに「土砂災害から身を守ろう」として、土砂災害を「土石流」、「がけ崩れ」、「地すべり」、「深層崩壊」、そして「土砂・洪水氾濫」に分類、「土砂・洪水氾濫」については2017年7月に発生した九州北部豪雨で、福岡県朝倉市の赤谷川で「土砂・洪水氾濫」が発生したことを紹介、次のように解説している。
「豪雨が降ると、山の上流から大量の土砂や泥水が流れてきます。この土砂が谷から平らな場所に出たところや川の中にたまり、川底が高くなったり、川がふさがれてしまうことがあります。その結果、川の水と一緒に土砂や泥水が溢れ出すことが「土砂・洪水氾濫」です。また、土砂と一緒に山から流れてきた木が川をふさいでしまうと、さらに大きな氾濫になることもあります」
土砂・洪水氾濫と土石流は、いずれも大量の土砂が関与する災害だが、発生メカニズムや被害の形態は異なり、「土砂・洪水氾濫」は、川の下流、すなわち人口集中地帯で起こりやすい現象となるから要警戒だ。過去の災害経歴を教訓としながら、これからの梅雨、梅雨末期、そして秋の台風時期など、大雨に注意し、早めの避難が重要となる。
〈2025. 06. 10. by Bosai Plus〉