-常ニ備ヘヨ を継承するために-
《本紙特約リポーター:片岡 幸壱》
「“防災文化の形成における大学の役割”」(主催=甲南大学 人間科学研究所)が昨年(2025年)11月29日に甲南大学・岡本キャンパス(兵庫県神戸市)で開催され、学生、一般などを含む165人が参加した。
阪神・淡路大震災で甲南学園は大学院生1名、大学生15名、高校生1名、中学生1名と同窓生の合わせて37名の尊い命を失い、校舎の半数が全壊した。
震災後30年のこれまでの活動と成果を総括するとともに、次の災害を防ぐ「防災文化の形成」に向けて、大学が果たすべき役割を考えることを目的として開催された。
シンポジウムの副題「常ニ備ヘヨ」は甲南学園の創立者・平生釟三郎(ひらお・はちさぶろう)が、1938(昭和13)年に発生した阪神大水害の際に遺した訓示で、予期せず起きるトラブルに備え、日頃から生きていくための知恵や技術、倫理観を身に付けておくことが大切であるという教えの引用である。


■ 基調講演、個別講演、パネルディスカッション、ポスター展示
基調講演は阪本真由美・兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科教授が「防災文化の形成に向けて -阪神・淡路大震災の経験より-」をテーマに話題提供。被災経験を活かした防災教育、災害の記憶継承、未来につなぐ防災文化などを取り上げた。
「震災学習で、阪神・淡路大震災を実体験として知らないから伝えられないという壁を乗り越える防災教育と復興教育を組み込んで、過去・現在・未来をつなぐ工夫が必要」と語った。

個別講演は、高石恭子・甲南大学文学部教授・学生相談室専任カウンセラーが「地域の心のケアの拠点を目指して」のテーマで、震災1年5カ月後の心の健康状態を調査した結果を、大澤香織・甲南大学文学部人間科学科教授は「災害から心を守る『備え』のために-大学教育の役割と意義」を講演。
久保はるか・甲南大学全学共通教育センター教授は「地域防災・被災地支援に大学が関わる意義」と題して「ぼうさい授業」の取り組みについて話し、岡村こず恵・甲南大学全学共通教育センター特任准教授・地域連携センターフェローは「学生と地域の架け橋をすることが重要」とした。
また、地域連携センター学生コーディネーター「なんティア」に所属する学生2人が「災害ボランティア活動の記憶に向き合うということ-阪神・淡路大震災30年を契機として」のテーマで話した。
パネルディスカッションはコメンテーターを諏訪清二・兵庫県立大学客員教授・防災教育学会会長・甲南大学非常勤講師が務め、前出の阪本氏、高石氏、大澤氏、久保氏、岡村氏、学生2人が登壇して討論した。
会場では、ポスター関連展示として、福井義一・甲南大学文学部人間科学科教授監修の「震災30年特別授業 トラウマ学『震災の記憶を継承する』 学生は親世代へのインタビューから何を受け取ったのか?」、川田都樹子・甲南大学文学部人間科学科教授・人間科学研究所所長監修による「甲南大学、阪神淡路大震災 被災と復興の写真展」が行われた。

■ 震災後30年を経たいま、大学として出来ること
シンポジウムを通して、冒頭の甲南学園創立者・平生釟三郎の教え「常ニ備ヘヨ」を実感し、危機管理の精神を未来に引き継いでいかなければならないと気を引き締めた。
阪神・淡路大震災を直接知らない世代が増えていくことは避けられないが、大地震・大規模災害をはじめ、日常性や想定を超える災害はいつでも起こり得る。若い人たちが過去の災害を知ることで防災意識が高まることは確かだろう。
※掲載写真については主催者の掲載承諾を得ています(片岡幸壱、編集部)。
▽本紙特約リポーター:片岡 幸壱
神戸市在住。中学2年のとき阪神・淡路大震災に遭遇、自宅は全壊したが家族は全員無事避難。学生時代より取り組んでいる防災を仕事と両立しながら、ライフワークとして、ユニバーサルデザイン(UD)などのイベント・ボランティア参加を続けている。聴覚障がいを持つ防災士としても活躍中。
▼参考リンク:
・甲南大学

