デジタルディバイド解消へ向けた取り組み、本格化
地域防災力向上へ“底上げ”を
ソフトバンク株式会社は、全国のソフトバンクショップで「スマホ教室」を実施している。だれでも参加可能なスマホの学びの場で、扱い方の基本から「スマホ決済」「スマホで詐欺対策」などの活用講座まで、利用者のレベルに応じたさまざまな講座を開催している。
そのスマホ学びの場にソフトバンクは、スマホを活用した防災教育「スマホ教室 防災講座」を、2021年にスタートさせた。
この講座では、設定編、避難訓練編、LINE活用編などを受講することができ、高齢者を中心に、スマホの基本操作に不安を抱える層に向けて災害時に役立つアプリの使い方や情報収集の方法を伝えている。この取組みは、2024年には全国約1900店舗、全ショップの9割以上にまで拡大されているという。

近年、地震や豪雨、台風などの自然災害が頻発・激甚化しており、災害時の情報収集や安否確認手段としてスマホの重要性は高まっている。しかし、とくに高齢者層はスマホの操作に不慣れな人も多く、災害時に必要な情報にアクセスできない「デジタルディバイド(情報格差)」が深刻な課題となっている。
こうしたなか、全国各地の自治体や通信事業者、防災系ボランティア団体などが、高齢者を対象としたスマホ教室を開催、地域防災力の底上げをめざす取組みが進んでいるようだ。以下の事例と課題・展望を見てみよう。
■ 「使える」から「活かせる」へ
東京都渋谷区によると、65歳以上の高齢者4万3000人のうち4人に1人がスマホを未保有(区民意識調査からの推計値)だとして、高齢者のデジタル機器の利用を促進し支援することでデジタルディバイドを解消すべく、「渋谷区高齢者デジタルデバイド解消事業」に着手。
支援内容は、専用コールセンター(遠隔サポート付き)の設置、必修講座や個別相談会の実施、「デジタル活用支援員」の募集・育成・活用(大学生によるサポートで多世代交流を図る)ほか、一般高齢者に向けては予約制個別相談「なんでもスマホ相談」、予約不要の相談コミュニティ「スマホサロン」設置、テーマ別スマホ講座などに参加可能だ。

■ 自治体と通信事業者の連携
こうした取組みは通信事業者との連携によっても支えられている。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの大手キャリアはCSR(企業の社会的責任)の一環として「スマホ教室」を全国で展開。緊急速報メールの受信設定や、災害用伝言板の使い方、LINEやメールでの安否連絡の方法などを実践的に指導している。
また、総務省も「デジタル活用支援推進事業」を通じて、地域のNPOや民間団体と連携し、スマホ講座の開催を後押ししている。2023年度には全国で約1万件の講座が実施され、延べ50万人以上が参加したという。
■ 課題は「継続性」と「地域差」
いっぽう課題もあり、まず高齢者の「受講継続性」。講座を一度受けただけでは操作を習得しきれず、また、時間が経つと忘れてしまうことも多い。この対策としては「スマホ相談窓口」などの常設だろう。また、都市部と地方での格差がある。過疎地域では人材・予算の確保がむずかしく、十分な支援が行き届いていない現状がある。

■ 防災教育との融合をめざして 今後への展望
スマホ教室を防災教育と融合させること――たとえば、避難訓練と連動してスマホでの情報確認や連絡手段の訓練を行うことは実践的だ。スマホ教室の受講者同士がスマホを通じて交友・情報交換のきっかけとし、地域のつながりを再構築する場にもしたい。
今後はさらに、AIや音声認識技術を活用した「話しかけるだけで操作できる」スマホの普及も期待される。また、自治体や防災士グループによる「デジタル防災リーダー」の育成、地域のスマホに通じた若者と高齢者がペアを組んで学ぶ「デジタル・ペア制度」など、新たな試みも始まっているようだ。
高齢者がスマホを通じて情報にアクセスし、災害時に自らの命を守る力を身につけることは、「災害犠牲者ゼロ」に向けて地域全体のレジリエンスを高める第一歩となる。スマホ教室の役割は今後ますます重要性を増していくだろう。
〈2026. 02. 19. by Bosai Plus〉

