COP30~未来の驚異? 現在の悲劇? 気候変動
「人間活動による気候変動で極端気象が起こりやすく…」
――科学的分析で偽情報打破を
■ COP30と 「気候リスク指数」(Climate Risk Index 2026)報告書
ブラジル・ベレンにおいて開催された国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)が、11月10日〜11月22日(1日延長)、閉幕した。「COP30」のCOPは Conference of the Parties の略で、後ろの数字30は開催回数、今年は30回目となる。2015年にフランス・パリで開かれたCOP21で採択された1.5℃目標の達成に向けた「パリ協定」に基づき、すべての国が自主的な温室効果ガス排出削減に取り組むことになっている。

しかし、気候変動を「史上最大の詐欺」と国連演説で主張したトランプ米大統領のように、自国経済の保護・優先から温暖化阻止に水を差す偽情報などのSNSを通じた影響力の拡大を阻止できず、課題は深刻化している。
今回の会議でも試行錯誤が続き、化石燃料からの脱却に向けた工程表の策定は、産油国などの抵抗で合意できず、21日までの会期を延長した。その結果、決裂は辛うじて避けて、温室効果ガス排出削減の加速や2035年までに途上国の災害軽減資金を3倍に増やす方針などを合意、二酸化炭素を吸収して蓄える熱帯林の保護に向けた動きも進んだものの、不十分な成果だったと言える。
ドイツのシンクタンクの「ジャーマンウォッチ」(Germanwatch)は、COP30開催に合わせて「気候リスク指数」(Climate Risk Index 2026)報告書を公表した。「気候リスク指数」は、2006年から最も長く継続的に発表されている気候影響関連指数の一つで、世界各地への「極端気象」の影響について分析、近年は人間活動による気候変動の影響を受け、世界各地で台風や猛暑などが激甚化し、極端気象が起こりやすくなっているとしている。
Germanwatch:Climate Risk Index 2026(英語版)
■ 世界各地で猛暑や台風、大雨、干ばつなどが激甚化し、犠牲者も増加
「気候リスク指数」報告書によると、1995年〜2024年の過去30年で、世界で9700以上の極端気象により83万2000人以上が死亡。経済的損失は4.5兆米ドルを超えたとする。2024年は人間活動による気候変動の影響で、世界各地で猛暑が発生し、記録上最も暑い夏となり、各国で数十億人が41日間の危険な暑さに見舞われた。猛暑は山火事やハリケーンの激化などにもつながったとも。
データ入手が可能な世界174カ国を対象に、極端気象が各地の国や地域に与える人的・経済的影響のランキングによると、「1995年〜2024年の30年の長期指数で最も極端気象の影響を受けた国」は、(ワースト順で)ドミニカ、ミャンマー、ホンジュラス、リビア、ハイチ、フィリピン、ニカラグア、インドなどとした。
また、「2024年にもっとも影響を受けた国」ワースト10では、カリブ海のセントビンセント・グレナディーン諸島ほか、グレナダ、そしてチャド、パプアニューギニア、ニジェール、ネパール、フィリピン、マラウィ、ミャンマー、ベトナムとなり、「人間活動による気候変動は特にグローバルサウスの国々に極端気象の発生頻度や強度に影響を与え、広範な気候影響を引き起こしている」とし、北半球の先進国が温室効果ガスを多く排出し、南半球の低所得国が極端気象の影響を受ける「不均衡」を指摘している。

いっぽう日本は、2023年度の100位から24年度は34位に急上昇した。記録的な猛暑や豪雨の激甚化が影響したとみられる。
日本で発生した極端気象への人間活動による地球温暖化やその他の気候変動の影響については、「極端気象アトリビューションセンター(WAC)」が「イベント・アトリビューション」という科学的手法で分析し、結果を公表していることを、本紙も取り上げた。
本紙 2025年9月16日付け:WAC「記録的高温、温暖化の影響で発生」
WACは、去る8月8日、「2025年7月下旬の記録的高温は『地球温暖化の影響がなければ発生しなかったレベル』」だったとした。日本でも毎年、熱中症での死者が多数出るなど影響が深刻化しており、極端気象は人びとの命を脅かすものとなっている。

WAC:2025年7月下旬の記録的高温 「地球温暖化の影響がなければ発生しなかった」
WACは、極端気象に対する気候変動の影響を「見える化」し、科学的な分析情報を迅速に発信するとしている。科学的な分析こそ、“フェイクニュース”の拡散を阻止する武器だ。
〈2025. 12. 02. by Bosai Plus〉

