佐賀関大規模火災は、対岸の火事ならぬ「隣り町の大火」
高齢化・木密・空き家、強風……
わが国のどこでも、延焼火災に“必要十分条件”
■ 大規模火災の“空白期間”に危機意識の覚醒を

11月18日の17時40分頃、大分県大分市佐賀関(さがのせき)で火災が発生、地元消防による消火活動が行われたが鎮火に至らず延焼し、11月19日午前9時には大規模火災となって大分県知事から陸上自衛隊第4師団長へ災害派遣要請が出された。
この火災により、住宅など182棟が延焼、約4万8900平方mが焼失。人的被害は、死者1名、軽症者1名となっている。火災規模としては、2016年の新潟県糸魚川市の大規模火災を上回る規模で、この数十年では最大規模の市街地火災(都市大火)となった。
大分市消防局は11月20日14時からの大分市災害対策本部会議で、「住家のある半島部分は鎮圧状態」と発表。11月26日19時00分には、陸上自衛隊の活動も終了した。

火災が大規模化した背景には、いくつかの要因が考えられている。この地方では11月は降水量が少なく大気が乾燥していたうえ、火災発生時の風速は5.8m、豊予海峡に面した地域特有の強い北西の風が延焼を拡大させたとみられる。また、現場は南東に向かって斜面勾配が厳しく、風向きと斜面方向が一致したことで(最大瞬間風速12.4m)、延焼速度が早まった可能性がある。約1.4km離れた離島・蔦島まで火の粉が飛んで(飛び火)延焼するという珍しい現象も発生した。
延焼した地区は、消防車が入れないほどの狭い通路にある木造家屋が密集する住宅地で、しかもその4割近くが空き家だったことも、消火活動を困難とした要因となったようだ。

わが国では山形県の酒田大火(1976年)以降、40年間にわたって大規模な都市火災は発生せず、糸魚川市大火(2016年)で都市火災の脅威を再確認した。それはまるで阪神・淡路大震災で社会が都市防災への関心を覚醒させた経緯と似ている。
糸魚川市大火後、消防技術の進歩、法整備などによる消火設備の普及、火災に強い都市計画や建物・設備の耐火性能が向上したことで、ほとんどの火災延焼は防止できる――と考えるのは早計であることが佐賀関大規模火災で明らかになったと言える。
少子高齢化、縮小する地域コミュニティ、空き家の増加、大都市ではいまだ解消されない木造密集住宅街――佐賀関大規模火災は、対岸の火事ならぬ、「隣り町の大火」だ。
大分県:大分市佐賀関の大規模火災災害情報について(第17報、2025年11月28日)
〈2025. 12. 01. by Bosai Plus〉

