被災地支援の善意と連携の陰に
弱みにつけこむ悪徳商法も暗躍
少しでも不審な点がある勧誘を受けた際は、
周囲の人や最寄りの消費生活センターに相談
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自然災害に関連した消費者トラブル――再建・復興の障害にも
副次的・人為災害としての“便乗商法・悪質商法” 被災地外でも注意
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地震や台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害……自然災害が発生すると、被災した住宅などの修理をはじめ、交通機関や旅行等のキャンセル、さらには便乗商法や悪質商法など、自然災害に関連した消費者トラブルが起こる傾向がある。しかも被災地やその周辺だけでなく、被災地から遠く離れた地域でも、その災害関連で発生している。
防災メディアとして本紙初の試みとして、災害の副次的・人為災害とも言うべき「自然災害に関連した消費者トラブル」の事例を知り、被害を未然に防ぐ参考情報としたい。なお、本稿の参考資料として、下記・広報から事例を収集している。
政府広報:被災地以外でも発生!自然災害に関連した消費者トラブル」
● 自然災害に関連した消費者トラブルの背景
自然災害後の混乱や不安な気持ちにつけ込み、さまざまな手口で消費者を欺く悪質商法が横行している。とくに大きな被害を伴う災害の後には、人びとの関心の高まりを利用して、被災者だけでなく被災地以外の消費者もターゲットにする便乗商法が現れやすい。過去の自然災害発生時に、全国の消費生活センターに寄せられたトラブルの事例をみると、「住宅など建物に関するトラブル」と「自然災害を口実にしたトラブル」が多く見られる。
国は、業者の勧誘を受けて不安や疑問を感じたり、消費者トラブルに遭ったりしたときは、最寄りの「消費生活センター」に相談することを薦めている。


▼ 住宅修理に関するトラブル
もっとも多く見られるのが、まさに弱みにつけこむ住宅の修理・再建に関するものだ。
・高額請求や手抜き工事: 大雨で雨漏りが発生し、業者に修理を依頼したもののさらに悪化したり、工事代金が高額で納得できないケース。なかには、見積もり依頼のつもりで呼んだ業者に高額な作業料金を請求された事例も。
・「保険が使える」と勧誘する手口: 「火災保険を使って自己負担なしで修理ができる」と勧誘する業者が増えているが、実際には高額な手数料を請求されたり、保険金の請求をめぐって業者とトラブルになるケース。経年劣化による損傷であるにもかかわらず、自然災害によるものと偽って保険金を申請するよう誘導するケースもあるため、注意が必要だ。
保険金の請求は、必ず消費者自身が事実に基づいて行い、不明な点があれば加入している保険会社に直接確認することが大切。
・点検商法: 「無料で屋根を点検する」などと訪問し、不安を煽って不要な工事を高額で契約させようとする手口。突然の訪問やしつこい勧誘にはとくに注意し、すぐに契約せず、複数の業者から見積もりを取って慎重に判断したい。
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注文住宅が台風で床下浸水。地盤整地問題で補償は?
内水氾濫で地下駐車場が浸水。破損した車の補償は?
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また、必ずしも“悪質・意図的”とまでは言えないが、“納得できない”トラブルも発生し得る。例えば、「1年半前にハウスメーカーが開発した土地を購入し建てた注文住宅が台風で床下浸水。自宅とその周辺の数件だけが浸水被害にあったが、家を建てる前は田んぼだったので地盤の整地が悪かったのだと思う。補償を求められるか」。
「賃貸アパートで、台風で雨漏り被害が拡大して家具が損傷したが、全額補償されない」――賃貸住宅が自然災害で破損した場合、一般的には大家・家主が修理や補償の責任を負うが、どの程度修理・補償するかなど詳細は個別の事情によって様々で、大家・家主と賃借人の間で意見の相違が生じて、トラブルに至ることがある。
また、「契約していた地下駐車場が台風により浸水、停めていた車が廃車になった」――
直近の9月12日に三重県四日市市を襲った記録的な大雨で、市の中心市街地にある商店街などが広範囲に浸水、地下駐車場で274台の車が被害に遭うという「内水氾濫」について、1カ月を経た10月14日時点でもまだ補償が見通せないという。

「台風による飛行機の欠航や、キャンプ場の予約キャンセル時に高額なキャンセル料を請求されるなど、交通機関の乱れに関連したトラブル」は、大きな災害に至らなくても気象条件によって起こり得る日常的なトラブルだろう。
ほかに、詐欺と疑われる勧誘の事例も見られる。「被災者のために高齢者施設への入居権を譲ってくれれば高く買い取る」などのように「被災者のため」という名目で劇場型勧誘(複数人がそれぞれ異なる役回りを分担して演じる手口)をしてくる。
ちなみに、劇場型勧誘のパターンには、「自分は購入する資格がないので、代わりに買ってくれれば高く買い取るという【代理購入型】」、「お金は代わりに払うので申し込みさえすれば良いという【代理申請型】」、「過去の損失を取り戻すという【被害回復型】」、「不審に思って申し込みをやめようとすると脅してくる【恫喝型】」、「郵送や手渡しで支払わせる【口座振込み回避型】」、「自宅を担保に借金までさせて全財産を奪い取ろうとする【根こそぎ型】」……
このほか、実在の公的機関や大手企業名をかたるなどして、信用を高めようとするケースも多く見られる。これらが複合的に用いられるなどして、より巧妙でより悪質な手口が登場しており、これらのパターンに限らず、少しでも不審な点がある勧誘を受けた際は、周囲の人や最寄りの消費生活センターに相談するのが賢明だ。
災害時に被災地支援の善意が満ち溢れるのは人の世の“希望”だが、同時に、人の弱みにつけこむ“性悪な輩(やから)”も闊歩するのも人の世の常。くれぐれもご注意を。
〈2025. 10. 20. by Bosai Plus〉