南海トラフに備え、東日本大震災の経験と地域から学ぶ
主催=大学都市神戸産官学プラットフォーム
《本紙特約リポーター:片岡 幸壱》

「第4回 つながりから広がる、地域防災の未来セミナー」(主催=一般社団法人 大学都市神戸産官学プラットフォーム)が去る7月19日、神戸国際会館(兵庫県神戸市)で開催され、学生、一般などを含む約40人が参加した。
2024年8月、初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表され、地震発生可能性の高まりへの注意喚起、日頃からの備えと準備能力が求められたいっぽうで、予測不可能な災害に対する優先事項と備えの見極めのむずかしさが明らかになった。
そこで、東日本大震災で地震、津波を経験し、避難所、応急仮設住宅、被災市街地復興土地区画整理事業を経て復興に尽力した宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区の町内会長・長沼俊幸氏からの課題提案、「私たちは災害へ、どう備え続けていけばよいのか」をテーマに掲げてセミナーが開催された。
■ 講演、座談会、フロア全体で討論
奥村弘・神戸大学理事・副学長・地域連携推進本部長の開催挨拶後、講演は松下正和・神戸大学地域連携推進本部特命教授が「神戸の災害と地域の歴史 ~地震・津波・風水害」をテーマに話題提供。神戸に影響を与えた地震・風水害などを取り上げて「それぞれの地域の災害の歴史を知り、伝えるとともに、災害文化をアップデートし、防災意識の向上や地域防災活動に活かしてほしい」と語った。

座談会「防災・復興の地域づくり、今後の南海トラフに備えて」では、前出の長沼俊幸氏、清原孝重・神戸市魚崎町防災福祉コミュニティ会長、青田良介・兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科教授、久保はるか・甲南大学全学共通教育センター教授が登壇。
長沼氏は東日本大震災での閖上地区の当時の状況と13年経って思うことを話し、清原氏は地域住民・災害時要援護者避難訓練、小学生の防災学習などの活動を通じて「日頃の人間関係が大切」とした。青田氏は「住民全体でできるところから取り組むべき」、久保氏は「甲南大学の学生が『ぼうさい授業』を企画し実施することで、自ら防災について学び、知識が得られる」と語った。
フロア全体での討論会「地域から災害を考える」ではコーディネーターを阿部真大・甲南大学学長補佐・社会連携機構長・教授が務め、野崎隆一・NPO法人神戸まちづくり研究所理事、山地久美子・神戸大学地域連携推進本部特命准教授と青田氏が登壇。
野崎氏は「阪神・淡路大震災、東日本大震災の経験から学んだ教訓を今後につないでいく」、山地氏は「防災・減災・被災・復興を人から人へ伝える語り部・語り継ぎが重要になる」と述べた。




■ 地域づくりが今後の災害に備える事の重要性
セミナーを通して「企業、行政、大学、住民のつながり」が重要であると実感させられた。過去の経験・地域の事例から学び、地域づくり・人の顔の見える関係づくりの実際・工夫・課題などを知ることで、今後の「災害に対する抵抗力・回復力としての防災」が機能するのではないか。
※掲載写真については主催者の掲載承諾を得ています(片岡幸壱、編集部)。
▽本紙特約リポーター:片岡 幸壱
神戸市在住。中学2年のとき阪神・淡路大震災に遭遇、自宅は全壊したが家族は全員無事避難。学生時代より取り組んでいる防災を仕事と両立しながら、ライフワークとして、ユニバーサルデザイン(UD)などのイベント・ボランティア参加を続けている。聴覚障がいを持つ防災士としても活躍中。
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