P2 1 日本海沿岸の地震の特徴 - 北海道日本海沿岸の<br>「地震・津波被害想定」

北海道日本海側の地震・津波
初の被害想定 道民に衝撃走る

地震・津波の発生を予知・予測することは困難、
「正しく恐れ、正しく備える」しかない!

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起こり得る事象を「自分事」として冷静に受け止めよう
「迅速な判断や素早い避難行動が命を守ることにつながる」
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 北海道防災会議の地震火山対策部会地震専門委員会「地震防災対策における減災目標設定ワーキンググループ」(座長:岡田成幸・北海道大学広域複合災害研究センター客員教授)が去る6月3日、「日本海沿岸の地震・津波被害想定」を公表した。
 日本海沿岸で最大クラスの地震・津波が発生した際に想定される具体的な被害を算定、その規模等を明らかにすることで道民に災害に備えることの重要性を周知し、それぞれの地域における防災対策の立案と、今後策定する減災対策の基礎資料とすることが目的だ。道による日本海沿岸で発生する地震や津波による被害想定は初めて。

P1 日本海沿岸の「地震・津波被害想定」の概要より(北海道資料) - 北海道日本海沿岸の<br>「地震・津波被害想定」
国の「長期評価」(2025年1月1日時点)では、北海道の日本海沿岸周辺においてM7.5程度を超える地震の今後30年以内の発生確率は、0~0.1%だが、令和6年能登半島地震は「0.1〜3%未満」とされていたなかで発生した。地震・津波の発生は予知・予測が困難であり、“最悪事態の想定”をもとに着実な防災対策を実施し、想像力をもって備えるしかない。道は「この被害想定の結果を悲観するのではなく」防災対策の基礎資料とすることを期待している

北海道:日本海沿岸の地震・津波被害想定について

 北海道では、日本海溝・千島海溝沿いで国が長期評価でマグニチュード(M)9クラスの巨大地震の発生が「切迫している」と評価するが、たまたま本年5月中旬から十勝・根室沖などで震度4を観測する地震が相次いだ折から、今回の日本海側で起こり得る地震・津波想定――しかも、被害想定が予想外に大きいだけに、道民は“動揺”したことだろう。

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北海道新聞は 大見出しに「衝撃で言葉が出ない」……
最大死者数、村民の8割超も
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 北海道新聞は道の被害想定公表に、大見出しに「衝撃で言葉が出ない」(同紙6月3日付け)とし、「島牧村の最大死者数・村民の8割超、短時間で津波、早期避難に困難も」とした。

北海道新聞:「衝撃で言葉が出ない」 島牧村の最大死者数、村民の8割超 道が被害想定公表

P2 2 被害想定の結果(被害が最大となるもの) - 北海道日本海沿岸の<br>「地震・津波被害想定」
被害想定の結果(被害が最大となるもの)

 国の予測では北海道の日本海沿岸でM7超の地震が今後30年以内に発生する確率は0〜0.1%と低いが、令和6年能登半島地震は確率が「0.1〜3%未満」とされていたなかで発生した。いっぽう、発生確率こそ低いものの、太平洋沿岸に比べて、日本海側では発生した津波が短時間で到達することも知られている。
 典型的な事例としては道南の奥尻島を襲った1993年北海道南西沖地震(M7.8/奥尻島を中心に死者・行方不明者230人)があるが、令和6年(2024年)能登半島沖地震(M7.6)も同じタイプの地震だった。
 また、1983年日本海中部地震は、秋田県の能代市西方沖で発生した地震(M7.7)が秋田県・青森県・山形県の日本海側で10mを超える津波を引き起こし、死者104人のうち100人が津波による。当時、日本海側には津波はないという俗説があって人的被害を大きくしたともされる。このとき男鹿市の加茂青砂では、遠足で訪れた小学校児童43人と引率教諭たちが津波に襲われ、児童13人が死亡、国内外に大きな衝撃を与えた。

P2 1 日本海沿岸の地震の特徴 - 北海道日本海沿岸の<br>「地震・津波被害想定」
日本海沿岸の地震の特徴

 今回の道の被害想定の特徴的な市町村を見ると――
○稚内市は最大震度7の地震により死者が最大で約4000人、建物全壊が約9600棟にのぼり、市町村別で最多
○小樽市は、想定津波高は最大8.3mで死者870人。北海道の日本海沿岸で人口が最も多く、主要な観光地が浸水予想エリアに含まれる。避難者数は最大約3万8700人にのぼる。
○後志管内島牧村は、津波高最大24.4mによる最大死者数が村民の8割超に相当する約1200人と推計された。村内では1993年の北海道南西沖地震後に防潮堤や高台への避難階段が整備されたが、道の予測では津波は最短4分で到達。
○檜山管内奥尻町は、津波が最短1分で到達し、津波高は最大20mを超える予想。北海道南西沖地震を受けて整備した避難路や防潮堤の老朽化が進むが、町単独での維持改修はむずかしいのが現状だという。
○渡島管内松前町は、最大で人口の約4割に当たる死者2400人、全壊建物1800棟。

P2 3 建物及び人的被害(市町村別) - 北海道日本海沿岸の<br>「地震・津波被害想定」
被害想定の結果(被害が最大となるもの)

 なお、建物被害が最大となるのは、稚内周辺の北海道北西沖の断層による地震で、揺れや液状化、津波などによって約1万6千棟が全壊する可能性があるとされ、冬季の場合は、津波で打ち上げられた流氷などが建物を壊すケースも考慮されている。

 然り、北海道の地震・津波被害想定とその対策においては、冬季の発災による避難所生活での低体温症や体調悪化による災害関連死も大きな課題となる。

P2 4 冬期にも津波を伴う地震が発生 - 北海道日本海沿岸の<br>「地震・津波被害想定」
冬期にも津波を伴う地震が発生し得ることは想定に入れなければならない。北海道周辺において過去200年間に発生したマグニチュード6以上の地震41回の内、16回が冬期(12月〜3月)に発生し、その内6回は津波を伴う地震であった。このことから、冬期にも津波を伴う地震が発生していることが分かる。出典:『理科年表(国立天文台編)2012年」等を基に作成、北海道周辺における過去200年間の地震・津波の発生状況(M6以上) (北海道開発局「雪氷期の津波沿岸防災対策検討会」報告書より)
P2 5 上左:1952年十勝沖地震津波で市街地に打ち上げられた流氷、右:高台に避難する住民 - 北海道日本海沿岸の<br>「地震・津波被害想定」
上左:1952年十勝沖地震津波で市街地に打ち上げられた流氷、右:高台に避難する住民
上左:1952年十勝沖地震の被災状況(浜中町霧多布)より、市街地に打ち上げられた流氷、右:高台に避難する住民(出典:浜中町役場提
供)(北海道開発局「雪氷期の津波沿岸防災対策検討会」報告書より)

本紙2023年1月29日付け:厳冬期の大規模災害に備える

 北海道で起こる地震は、太平洋側では千島海溝沿いの領域でプレートの沈み込みによる地震が発生する。2022年の道の日本海溝・千島海溝巨大地震の被害想定では、死者が最大約14万9千人。道内の太平洋側の自治体は、国の特措法で津波タワーなどの建設に対する補助率が2分の1から3分の2に引き上げられており、日本海沿岸の自治体からも同様の財政支援を求める声が上がることは必定だ。

 いっぽう、札幌や、石狩、空知、胆振にかけての内陸でも活断層が存在し直下地震も想定されている。札幌市の想定では最大で震度7の揺れ、最大死者数約4900人。液状化の痕跡や資料などから過去にも震度6以上の強い揺れが何度も発生しているという。近年では2003年十勝沖地震(M8.0/最大震度6弱)や道内で初めて震度7を記録した2018年北海道胆振東部地震(M6.7)がある。

札幌市:第4次地震被害想定(2021年8月)

〈2025. 06. 15. by Bosai Plus

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