P6 1 つながる防災~「災害支援列車」 - 避難所をまるごと列車で運ぶ<br>「災害支援列車」の実証実験

「しなの鉄道 Connect 〜つながる防災フェス」
―6月7日開催

● 人や物資など避難所をまるごと鉄道で輸送、駅前に避難所を開設

P6 2 しなの鉄道路線図より - 避難所をまるごと列車で運ぶ<br>「災害支援列車」の実証実験

 しなの鉄道と言えば、長野県上田市に本社を置くいわゆる第三セクター鉄道事業者で、北陸新幹線の開業に伴い、東日本旅客鉄道(JR東日本)から1997年と2015年にそれぞれ経営分離された長野県内の並行在来線(しなの鉄道線:長野県長野市の篠ノ井駅〜長野県軽井沢町の軽井沢駅/北しなの線:長野市・長野駅と新潟県妙高市の妙高高原駅)を引き継いだ鉄道会社だ。
 そのしなの鉄道を核とする長野県災害地域連携コンソーシアムが来たる6月7日、「しなの鉄道 Connect 〜つながる防災フェス」を開催する。

 「しなの鉄道 Connect 〜つながる防災フェス」は、有事の際を想定し、人や物資など、避難所をまるごと鉄道で輸送し、駅前に避難所を開設する実証実験だという。鉄道の持つ「輸送力」と沿線の「駅および駅前空間の活用」に着目して企画され、当日は支援物資に加え、ボランティアスタッフや関係者約60名を輸送予定。

 イベントは、しなの鉄道線・戸倉駅〜北しなの線・黒姫駅間(イベント会場:黒姫駅)で行われ、広いスペースのある戸倉駅を拠点に支援物資とボランティアを列車に乗せて、黒姫駅まで輸送し、途中の北長野駅では防災倉庫からの物資も積み込む。

 黒姫駅に到着後、列車で運んだ物資と人員のみで避難所を開設。会場は黒姫駅前の信濃町有地と、しなの鉄道の敷地を活用する。避難所では、炊き出し体験や防災トーク、防災関連のブースを通じて、災害時の体験ができるイベントを行い、一般の参加者(無料)に向けた物資配布や休憩スペースも設けられる。

 また、実際の災害時を想定して、一次避難の体験として黒姫駅から戸倉駅まで列車で避難し、そこから地域連携先である戸倉上山田温泉の旅館に移動する。

P6 3 『しなの鉄道Connect つながる防災フェス』 - 避難所をまるごと列車で運ぶ<br>「災害支援列車」の実証実験
「災害支援列車」の企画コンセプトより

長野県災害地域連携コンソーシアム:しなの鉄道Connect〜つながる防災フェス

● 被災地支援に「鉄道活用」の発想は しなの鉄道の被災経験から

 “避難所をまるごと列車で運ぶ「災害支援列車」”の発想の背景には、これまで被災地支援で活用されることのなかった鉄道利用の可能性に着目したことがある。地域防災の課題としては、被災地域の職員や消防団が、同じ被災者でありながら休みなく地域を支援する負担や、ボランティアの駐車場確保、物資支援などによる運送・交通混乱がみられることなどがあった。

 しなの鉄道では、令和元年(2019年)東日本台風(台風19号)などでの災害経験から、必要物資の供給に加え、鉄道の輸送力、駅スペースの防災拠点活用の検証とともに、地域・自治体・関係機関との連携強化をめざしてきたという。その成果の実証実験としての「しなの鉄道Connect〜つながる防災フェス」となった。

P6 4 台風19号で浸水被害を受けた北陸新幹線車両センター(Wikipediaより) - 避難所をまるごと列車で運ぶ<br>「災害支援列車」の実証実験
台風19号で浸水被害を受けた北陸新幹線車両センター(Wikipediaより)

 今回はとくに、「大雪により道路が寸断された信濃町エリア」を想定、救援物資やボランティア、支援スタッフを列車に積載し、広いスペースの確保と、長時間列車の停車が可能な戸倉駅から黒姫駅まで輸送、避難所開設を想定した炊き出し、防災機材の設営を試みる。

 なお、同事業は公益財団法人長野県みらい基金・休眠預金活用事業「しなの鉄道 災害対策機能強化事業」の一環として実施し、災害発生時における地域支援力を高める新たな一歩として鉄道の活用方法を検証し、地域防災力の向上をめざす。

 ちなみに、長野県を中心としてワーケーションまちづくり事業、モビリティスナック事業など、コレクティブインパクトを生み出す取組みを進める株式会社ふろしきや(長野県千曲市)がしなの鉄道から委託を受け、実証型イベント『しなの鉄道Connect〜つながる防災フェス』の企画・運営を担当している。

株式会社ふろしきや

P6 1 つながる防災~「災害支援列車」 1 - 避難所をまるごと列車で運ぶ<br>「災害支援列車」の実証実験
『しなの鉄道Connect つながる防災フェス』

〈2025. 06. 02. by Bosai Plus

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