フードバンク団体による災害時に
おける食の支援実施ガイドブック
フードバンクの平時の仕組みは、
災害時にも、被災者の食料支援のために転用できる。
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ジャパン・プラットフォーム(JPF)の「休眠預金活用事業」で
“だれひとり取り残さない災害時の食”
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ジャパン・プラットフォーム(JPF:Japan Platform。以下、「JPF」)は、自然災害の被災者、紛争による難民に向けたNGO(Non-governmental Organization:国内・国外の人道的課題に取り組む非政府組織)の人道支援活動を支えるオールジャパンの「中間支援組織」(人道支援活動を行うさまざまな担い手の連携コーティネート役の組織)として知られる。
そのJPFが、2021年度休眠預金活用事業における資金分配団体として、同事業の実行団体である「セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)」、「全国フードバンク推進協議会」(フードバンク岩手とのコンソーシアム)と連携して、災害時に迅速かつ効果的に「食」の支援が届く体制づくりを進めてきた。
これは、発災直後から復興期を見据えた食料支援体制の構築を目的に、とくに高齢者・障がい者・在宅避難者などの災害脆弱層への支援強化を重視して取り組むもので、近年、異常気象などにより災害頻度が高まるなかで、平時からの備えと、災害時にすばやく動けるネットワークの必要性がますます高まっているためだ。
そこでJPFでは休眠預金活用事業の一環として、実行団体と共に『フードバンク団体による災害時における食の支援実施ガイドブック』を作成・刊行した(同事業は「通常枠(平時)」と「緊急枠(災害時)」の2つの枠組みから成り立っており、その両者の評価をまとめた「事後評価報告書(概要版)」も作成・公開)。
ガイドブックは、各地域で支援活動を行う団体に配付し、またJPFホームページにPDF版を公開(ダウンロード可)、支援活動の統一性と質の向上に向けた基盤となることをめざしており、災害時の食料支援に取り組む、あるいはこれから取り組もうとしている組織・団体にも、同ガイドブックの活用を訴えている。

JPF:フードバンク団体による災害時における食の支援実施ガイドブック
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『フードバンク団体による災害時における食の支援実施ガイドブック』
全国的な食料支援(フードバンクネットワーク)の構築へ
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JPFが作成した『フードバンク団体による災害時における食の支援実施ガイドブック』は、サブタイトルに「だれひとり取り残さない災害時の食」とある。これは先述のように、発災直後から復興期を見据えた食料支援体制の構築、とくに高齢者・障がい者・在宅避難者などの災害脆弱層への支援強化をめざすものだ。
「フードバンク」とは、食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設などへ無料で提供する団体の活動を言う。食品企業にとってはいわゆる食品ロスを削減でき(消費期限切れなど品質に問題のある食品は対象としない)、廃棄に要する費用を抑制でき、食品ロスを削減しつつ社会福祉活動に貢献しているという面でCSR(企業の社会的責任)の取組みともなって、企業価値の向上にもつながる。
いっぽう、社会貢献を目的とするNGO・NPO等の市民団体は、野外生活者、児童施設入居者、DV被害者保護施設入居者、低所得世帯、生活保護世帯、ひとり親世帯などの生活困窮者、子どもの貧困・子ども食堂などへの食料支援を通じた社会福祉への貢献となる。
そしてこの仕組みは、災害時にも、被災者に向けての支援のために転用できるのだ。
本稿『フードバンク団体による災害時における食の支援実施ガイドブック』の関連では、「セカンドハーベスト・ジャパン」(以下、「2HJ」と、「全国フードバンク推進協議会」(フードバンク岩手とのコンソーシアム)を取り上げている。
2HJは、元米国海軍の軍人で、上智大学留学生のチャールズ・E・マクジルトン氏が、2002年3月に日本初のフードバンク団体を設立、同年7月に東京都から特定非営利活動法人(NPO法人)2HJの認証を受けた。2HJは、令和6年能登半島地震と奥能登豪雨発災以降、被災地支援において、国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)に協力を要請、同団体の新・災害支援スキームを活用した食品寄贈を受け入れた。この寄贈食品は、2025年1月から順次、各企業より2HJ中能登拠点等に納品され、同スキームにおいて大規模支援が実現した最初の事例となった。


生団連が構築をめざす新・災害支援スキームは、700を超える企業・消費者団体・NPO等の連合体として組織内の協力体制を整備し、実効力ある災害支援を実現することを目的とするもの。被災地への継続支援として「食料応援パッケージ」プロジェクトを実施する2HJからの支援要請がきっかけとなったという。
いっぽう、「全国フードバンク推進協議会」(フードバンク岩手とのコンソーシアム)では、広く一般家庭からも食品の提供を呼びかけ、「フードドライブ」を推進する。フードドライブの「ドライブ」は活動や運動という意味で、food(たべもの)、drive(運動)で、「食べ物を集める運動」という意味だ。フードドライブは各地域のフードバンク団体が行政窓口や公共施設、NPO法人、社会福祉協議会などの事務所に食品の回収BOXを設置して実施。全国フードドライブキャンペーンの呼びかけやノウハウ支援などを行っている。

『フードバンク団体による災害時における食の支援実施ガイドブック』は、「第1章:このガイドブックについて」、「第2章:災害時における食の支援活動の実態」、「第3章:中核フードバンク団体による中間支援」、「第4章:支援手法」、「第5章:活動に際しての配慮事項」の構成となっている。災害時に迅速かつ効率的に食料を届けるため、全国的なフードバンクネットワークの形成が重要、地域の自治体や民間団体との協力関係を深め、発災時の迅速な対応を可能にするための仕組みの構築などを推奨する。
「災害時の食料支援ガイドブック」はまさに、“だれひとり取り残さない災害時の食”の確保に向けた、タイムライン付きの被災者・被災地支援強化ガイドブックとなっている。

〈2025. 04. 24. by Bosai Plus〉