「電話リレーサービス」説明動画より

防災啓発から、避難、避難生活支援でも活用できる「電話リレー」
――「インクルーシブ防災」の視点からも注目

「インクルーシブ防災」の視点からも注目される公的サービス

 耳が聞こえない人の通話を手助けする「電話リレーサービス」がこの7月1日から公的サービスとして始まった。聴覚障害者、難聴者、発話困難者(日本財団では「きこえない人」と表記)と、きこえる人(聴覚障害者等以外の人)との会話を、通訳オペレータが「手話」または「文字」と「音声」を通訳することにより、電話で“即時双方向”につながるサービスだ。 

 「電話リレーサービス」はもともと、公益財団法人日本財団が2013年から試験的に始めていたサービスで、今年6月時点で、聴覚障害者ら約1万3400人が登録しているという。これまでは日本財団が通話料などを負担してきたが、24時間対応ができないなど、緊急時などに不便な面もあった。
 欧米主要国では国の制度として提供されていることもあり、わが国でも公的な制度として拡充すべきという声が高まり、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が制定(2020年12月1日施行)され、公共インフラとして「電話リレーサービス」が制度化された。

P5 1 「電話リレーサービス」説明動画より 1 - 「電話リレーサービス」 始まる<br>防災と福祉 支援に組み込みたい
日本財団の紹介動画より。「電話リレーサービス」は24時間・365日、聴覚障害者、難聴者間などでの双方向利用が可、緊急通報機関への連絡も可能だ

 「電話リレーサービス」は防災や被災者支援においても有効で、過去の大規模災害発生時には、被災した聴覚障害者から「避難所の食料配給を知らせる声が聞こえず受け取れなかった」などの報告があり、日本財団は熊本地震時に同様の問題が発生すると想定して、「電話リレーサービス」による支援策をスタートさせている。
 近年、防災と福祉の連携が必須となっているが、地域防災にかかわる私たちにとっては「インクルーシブ防災」の視点からも注目される新しい公的サービスだろう。

警察や消防などへの緊急通報を含め、毎日24時間、365日、利用可

 「電話リレーサービス」を利用するには、スマホなどの専用アプリか郵送で事前に登録し「050」で始まる専用の電話番号を発行してもらう。その使い方は――

「きこえない人」にとっての使い方
【緊急通報機関への連絡】
☆緊急時、110、118、119へかけることが可能
【病院の予約・連絡】
☆体調が悪い時など、病院へ連絡可能。病院に電話番号をあらかじめ知らせておくことで、病院からの連絡を受けることも可能
【仕事の相手先との連絡】
☆仕事先に電話連絡してやりとり、相手先からの連絡も電話で受けられる
【店舗の予約・連絡】
☆注文など、詳細な依頼がリアルタイムで可能。店舗・レストラン側も着信履歴から発信者番号がわかり、確認不足の点を折り返して確認できる
【学校や塾からも連絡】
☆子どもが学校や塾で体調を崩した時もすぐに保護者へ連絡が可能
【家族・友人からも連絡】
☆話したいときに、電話連絡が可能。事前に電話番号を知らせておくことで、家族や友人から電話をもらうことも可能。ほかに、銀行やクレジットカード会社への問い合わせ、宅急便の再配達などで速やかなやりとりが可能。
 なお、通話料は電話をかけた人が負担する。きこえない人が発信する場合、月額料1番号あたり178.2円(税抜162 円)、固定電話着5.5円(税抜5円)、携帯電話着33円(税抜30円) *通話料はいずれも1分あたり。緊急通報、フリーダイヤルは無料。

きこえる人が発信する場合
 電話のかけ先が、電話リレーサービスに登録している利用者(きこえない人)の場合は、特別な利用料は発生しないが、IP電話(050番号)へ発信する際の電話料金が適用される。
 詳細は下記――

日本財団:電話リレーサービス

P5 2 「電話リレーサービス」新聞広告の事例より - 「電話リレーサービス」 始まる<br>防災と福祉 支援に組み込みたい
「電話リレーサービス」開始の新聞広告より

〈2021. 07. 15. by Bosai Plus

コメントを残す