過去の噴火の研究・分析・シミュレーション技術は進んだが、
噴火事前予測は依然困難 前兆現象がカギ!

●富士山火山314年間の沈黙と、17年ぶりのハザードマップ改定

 静岡県・山梨県・神奈川県の各行政機関や警察、消防、国の関係機関等で構成する「富士山火山防災対策協議会」(委員長:藤井敏嗣・山梨県富士山科学研究所所長)は去る3月26日、富士山噴火時のハザードマップを改定し公表した。従来版は国が2004年に策定したもので、今回の改定は17年ぶりとなる。

P3 1 富士山ハザードマップ改定版要旨より「溶岩流の到達範囲拡大可能性」 - 富士山火山の噴火 再想定<br>予測困難でも避難に資する
富士山ハザードマップ改定版要旨より「溶岩流の到達範囲拡大可能性」

 富士山ハザードマップは、富士山が噴火した場合に、溶岩流や降灰などの噴出物が周辺地域に及ぼす影響の可能性、そして行政が避難計画を策定する際の基礎資料として活用する防災用の地図となるもので、溶岩の流下の様子など噴火予測を個別ケースごとに表した「ドリルマップ」と、それらの各ケースを重ね合わせて、富士山全周の影響範囲や噴出物の到達時間を網羅的に表した「可能性マップ」の2種類がある。

 富士山は、歴史的に何度も噴火を繰り返しており、最後の噴火である1707年の宝永噴火から300年以上が経過していることから、「次の噴火はいつ起きてもおかしくない」とされる。また、現在の科学技術では、いつ、どこで、どのような噴火が起きるのか、事前に予測することは困難でもある。しかし、なんらかの前兆現象はとらえられると考えられていることから、24時間体制で火山活動の観測を行っている。

 前回のハザードマップ策定以降、富士山の地質調査や研究等が進み、噴火実績をこれまでの3200年前から5600年前までさかのぼって調べることが可能となり、複数の噴火口跡を新たに発見(噴火を想定した火口の数は改定前の約5倍の252カ所)したほか、大規模噴火となった864年の貞観噴火の際に約13億立方mもの溶岩が流れ出たことなどが分かった。また、噴火シミュレーションの技術も大きく進歩してきたことから、これらを含めての今回のハザードマップ改定に至っている。

 改定の主な結果より――
▼溶岩流が達する可能性のある自治体は、従来の2県15市町村から神奈川を含む3県27市町村に拡大。山梨県富士吉田市市街地への到達時間は約2時間で、従来版から約10時間早まる。神奈川県では相模原市に約9日後、小田原市に約17日後に到達。東海道新幹線には約5時間後に達するなど、交通機関への影響も見込まれている。

▼火砕流の流下は、北東方向と南西方向で延びると想定。東富士五湖道路に最短6分で到達すると推計され、主要道路が寸断される懸念がある。

>>静岡県:富士山火山防災対策

〈2021. 04. 01. by Bosai Plus

コメントを残す